不妊治療の知識
子宮内に異常があると、受精卵の着床が起こりにくくなったり、胎児が順調に発育できなくなり、流産の原因になったりします。
子宮の異常としては、子宮筋腫などの良性腫瘍やポリープがある場合、子宮内腔の掻爬などが原因で癒着が起こっている場合のほか、生まれつき子宮の形に異常がある子宮形態
異常や、子宮内膜症が子宮の筋肉の中にできて子宮が硬くなる、子宮腺筋症などがあります。
治療法としては、ホルモンによる治療と、手術による治療が考えられます。
子宮異常の治療には、以下のものがあります。
ここから、子宮異常の治療について説明していきます。
子宮筋腫は、子宮の筋肉の一部から発生する良性の腫瘍です。この子宮筋腫が不妊症や流産の原因となる場合があります。一方、子宮筋腫があってもちゃんと妊娠・出産できる場合も多く、治療開始にあたっては、慎重に検討する必要があります。子宮筋腫が不妊や流産の原因であると診断された場合の治療法は、次の2 通りです。
ホルモン治療は、GnRHアナログを4~6ヶ月位使用して女性ホルモンの分泌を抑え、子宮筋腫を縮小させるものですが、効果が確実ではなく、しかもその効果は一時的ですので、不妊症の治療としてはあまり期待できません。
子宮筋腫核出手術は、開腹手術で行うことが多いのですが、小さいものは腹腔鏡を用いて行うこともあります。
子宮内膜症が子宮の筋肉の中に発生し、子宮の筋肉が硬く腫れるようになった状態が子宮腺筋症です。受精卵が着床しにくくなり、その結果、不妊症になると考えられています。
まず、ホルモン治療(GnRHアナログやダナゾールなど)を4~6ヶ月位行い、子宮腺筋症の改善を期待します。ある程度の改善を期待できますが、治療効果は一時的です。
従って、治療終了後なるべく早く妊娠が起こるように努力します。
手術療法では、腺筋症によって硬く腫れた子宮の筋肉を切除します。腺筋症の場合、病変の境界は不鮮明であるため、子宮腺筋症を全て取り除くことは困難です。
双角子宮、中隔子宮などにより子宮腔に形態異常がある場合、不妊症や流産の原因となります。
子宮腔が変形し、着床が起こりにくくなるのでしょう。
双角子宮や中隔子宮などでなかなか妊娠しない場合や、3回以上流産を繰り返す場合には、手術による子宮整形治療を考慮します。
重複子宮では、左右の子宮が完全に分離していますので、手術による整形治療は望めません。
弓状子宮のように変形の程度が軽い場合には、通常、手術治療の対象にはなりません。
手術の方法は、開腹して行う場合と、子宮鏡を膣から子宮内腔に挿入して余分な部分を削る方法があります(レゼクトスコピー)。子宮鏡による手術の場合は日帰りが可能です。
どちらの方法がよいかは、子宮形態異常の程度などにより慎重に検討して決めます。
子宮内腔の掻爬術を受けたり、また細菌感染による炎症などで、子宮の中が傷ついた結果、子宮内腔に癒着が起こることがあり、これを子宮内腔癒着といいます。
受精卵が着床するはずの子宮内腔が癒着して閉鎖してしまうと、妊娠は期待できません。
子宮内腔が癒着している場合は、癒着を剥離し、子宮内腔を拡張する手術を行います。
通常簡単な麻酔をし、子宮鏡を膣から子宮内腔へ挿入して、癒着している部分をはがします。
拡張手術後、再癒着を防止する目的で、子宮内にIUDを挿入し1~2ヶ月間留置しておきます。
IUDとは、本来避妊を目的として子宮内に挿入するプラスチック製のものです。
子宮内膜の一部が増殖して、良性の腫瘍を形成したものを子宮内膜ポリープといいます。
子宮の中にポリープが発生すると、たちまち子宮の中を占拠してしまい、受精卵の着床を妨げることになり、不妊症の原因となります。
治療法は、簡単な手術により、ポリープを切除します。
患者さんには静脈麻酔をし、膣から子宮内腔へ鉗子を挿入して、ポリープを切除します。
身体的負担が少ない比較的簡単な手術で、日帰りが可能です。