診療・治療
「先進医療」とは有効性が期待される高度な医療技術のうち、現時点では公的医療保険の対象になっていないものの、厚生労働大臣によって保険診療との併用が認められた治療法や技術です。将来の保険適用を目指して評価を行っていきます。
そのため、診療情報や成績について、厚生労働省へ報告する必要があります。これらの作業は、患者様の個人情報が特定できない形で行われますので、個人情報やプライバシーに関するものが公表されることは一切ございません。情報の使用をご希望されない場合は担当医師にお申し出ください。
当院では下記の先進医療が実施可能です。先進医療部分は自費診療となります。(自費 34,000円)
タイムラプスとは、受精卵(胚)を一定の間隔で撮影した画像を繋ぎ合わせ、動画として観察することで、受精から分割の経過を、より詳細に解析することができるシステムです。このシステムを備えている培養庫は、胚を観察するための顕微鏡を内蔵しています。従って、胚を取り出すことなく観察が可能となり、胚に負荷がかかりません。
(自費 11,500円)
顕微授精を行う際、運動性があり、かつ形態良好な精子を選別しますが、通常の顕微鏡の倍率(400倍)では確認できない精子(頭部に極小の空胞がある等)も存在します。IMSIとは、高倍率(1,000倍以上)の観察を行うための専用の顕微鏡を使用することにより、より形態が良好な精子を判別し、顕微授精に用いる治療方法のことです。当院では、繰り返し顕微授精を施行しても、良い結果が得られない患者様に推奨している技術となります。
(自費 40,000円)
着床の成立には、子宮が胚を受け入れる環境を整えなければいけません。環境を整えるために、胚が受精から胚盤胞までの成長過程に発する伝達物質(シグナル)が関与していることが分かっています。
当院が開発したSEET療法とは、体外受精においても自然妊娠と同様のシグナルを子宮に届けることで、より着床しやすい子宮内膜の状態を作り出し、妊娠率の向上を促進する技術になります。ご自身の胚を育てた培養液(リンス液)を胚盤胞移植に先だって子宮内に注入して子宮内膜の環境を整えた後、胚盤胞を移植する方法です。
(※自費 新鮮胚移植 75,000円、凍結融解胚移植 120,000円)
着床の成立には、子宮が胚を受け入れる環境を整えなければいけません。環境を整えるために、胚が受精から胚盤胞までの成長過程に発する伝達物質(シグナル)が関与していることが分かっています。
二段階胚移植法は当院が開発したSEET療法の考え方の基となった技術です。体外受精においても自然妊娠と同様のシグナルを子宮に届けることで、より着床しやすい子宮内膜の状態を作り出し、妊娠率の向上を促進する技術になります。分割期胚(初期胚)を胚盤胞移植に先だって移植して子宮内膜の環境を整えた後、胚盤胞を移植する方法です。合計2個の胚を移植するため、多胎のリスクがありますので、本技術はSEET法を実施したものの反復して着床・妊娠に至らない方が適応となります。
自費となるのは初期胚移植の部分で、胚盤胞移植は保険診療となります。
(自費 30,000円)
子宮内膜にわずかに損傷を与えることで、子宮内膜の受容能が高まるという研究報告がいくつかなされています。その仕組みは解明されていない部分もありますが、傷が修復される際にホルモンやサイトカインといわれる物質が働くことにより子宮内膜の機能が高まるのではないかと考えられています。実際に胚移植を行う前の周期で子宮内膜スクラッチを実施し、成績が向上したという報告も複数あります。当院でも、以前に繰り返し胚移植を行っても妊娠に至らなかった方を対象に行った研究において妊娠率が向上し流産率が低下したという結果を報告しています。通常、子宮内膜スクラッチは胚移植を行う予定の前周期の黄体期(=高温期:排卵後から月経開始までの間)頃に、子宮内膜の細胞を取る器具を用いて子宮内膜にわずかな傷をつけます。その翌周期に胚移植を行います。
(自費 24,000円)
ヒアルロン酸は、卵子周囲を覆っている主成分となります。成熟した精子はヒアルロン酸への結合能力が高いこと、また成熟度の高い精子ほど、DNAのダメージが受けにくいことが報告されております。通常の 顕微授精では、運動性及び形態学的に良好な精子を選別しますが、精子が成熟しているかの選別はできません。
一方PICSIは、 ヒアルロン酸が塗布された特別なdishに精子を添加しヒアルロン酸と結合している精子を選別後、顕微授精を行います。この方法を用いるとで、繰り返し顕微授精を施行ても良い結果が出ない患者様におきまして、胚発生の改善や流産率の低下を期待できます。
(自費 138,000円)
ERA(子宮内膜着床能検査)は、子宮内膜が胚の着床に適した状態となる一般的な時期、すなわちプロゲステロン投与開始から約5日後の時点で、子宮内膜に着床能が認められるかどうかを判定する分子生物学的検査です。この検査は、子宮内膜組織における248個の遺伝子について次世代シーケンサーを用いて実施する遺伝子発現プロファイル評価に基づくものです。この248個の遺伝子は着床能を調べるための因子であり、これまでに知られている子宮内膜着床能に関わる重要な因子を含んでいます。そのため、ERA は子宮内膜が胚移植に適した理想的な状態となる時期を判定するのに役立ち、子宮内膜にとって理想的な時期に胚移植を実施することを可能とします。結果として、体外受精治療による妊娠成功率を高めることができます。
(自費 58,000円)
EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)は、子宮内膜に存在する細菌を網羅的に分析する検査です。この方法は、次世代シーケンサーを用いて細菌のDNAを調べることで、妊娠成功との関連が認められているさまざまな子宮内膜の細菌群を検出します。
ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)は、次世代シーケンサーを用いて、慢性子宮内膜炎と呼ばれる子宮内膜の慢性的な炎症の原因に特に関わりが深い細菌性病原体の有無を検出するものです。子宮内膜におけるこれら細菌性病原体は不妊および妊娠合併症に関係することがわかっています。これらの検査は、プロゲステロン投与開始から5日後または自然周期15~25 日目に採取された子宮内膜生検検体に対して実施することができます。
(自費 58,000円)
子宮内フローラとは子宮内に存在する細菌叢(さいきんそう)のことです。子宮内に様々な細菌がいることが次世代シークエンスで発見されています。なかでもラクトバシルス属の割合が多い人が妊娠しやすいことがわかってきました。
子宮内膜のごく一部を採取して、Varinos株式会社において次世代シークエンス検査を行います。検査の結果を参考にして抗菌剤治療または乳酸菌製剤治療を行います。
(自費 35,000円)
ARTに用いる精子調整は、遠心分離を用いて良好運動精子を選別する方法が一般的です。しかし、遠心分離を行うことにより精子にダメージを与えてしまうことが懸念されます。膜構造を用いた生理学的精子選択術は、精子の特性を利用し、遠心分離を行わず良好運動精子を選別できる方法です。この方法はZyMōt(ザイモート)スパームセパレーターという精子選別装置を使用して行います。これにより、培養成績及び妊娠率の向上が期待されています。
一般的な精子調整方法よりも精子の回収率は低くなるため、ZyMōtを使用する場合、受精方法は顕微授精のみになります。また、当日の精液所見により、ZyMōtでの調整ができない場合があります。その場合は、一般的な精子調整法になります。