診療・治療
通常の顕微授精を行う際、精子の選別は顕微鏡400倍下で行い、良好な運動性と図1のような正常形態を持ちあわせた精子を卵子に注入します。しかし、顕微鏡 400倍下の観察で形態良好な精子であっても、なかには図2のように頭部に空胞がある等、通常の倍率では確認できない形態の違いを持つ精子もあります。
IMSI とは、1000倍以上での精子観察を可能とした専用の顕微鏡を用いることで、図2のように精子の頭部の状態などをより詳細に観察し、より良い形態の精子を顕微授精に用いる治療方法のことです。この方法を用いることで、複数回顕微授精を施行しても良い結果が得られていない患者様に対して、胚発生の改善や妊娠率の向上等を期待できます。
ICSI後反復妊娠不成功症例に対するIMSIを実施により、以前のICSI成績と比較して、受精率,分割率,良好初期胚率,胚盤胞発生率には有意差が認められませんでしたが、day5での良好胚盤胞発生率は有意に高率となりました。
ICSI周期とIMSI周期における
胚盤胞発生率
検討期間
2007年9月~2009年6月
ICSI周期とIMSI周期における
良好胚盤胞発生率
検討期間
2007年9月~2009年6月
従来のヒト顕微授精の方法では、injection needleで卵子の透明帯を押し破り、卵細胞質膜は吸引して穿破するという方法で、卵細胞質内に精子を注入しています。Piezo ICSIでは微細な振動を用いて卵細胞質の形態が変化しないように透明帯に穴をあけ、卵細胞質膜を吸引することなくパルスを使用して破り、卵細胞質内に精子を注入します。このようなことからPiezo ICSIは卵子に与えるダメージが従来の方法より小さいため、卵子が脆弱になっており、顕微授精に耐えられなくなっている症例に有効であるという報告があります。
顕微授精で変性してしまう卵子が多い方などにお勧めしています。
Piezo-ICSIとc-ICSIの成績比較(42歳以上)
c-ICSI=従来法
当院では胚盤胞発生率の項目で差が出ております。
顕微授精は通常図1のように成熟卵子の第一極体を12時または6時の方向にあわせて固定し、3時の方向から精子を注入します。これは核分裂に重要な紡錘体が第一極体の近くに存在することが多く、この紡錘体を傷つけずに精子の注入を行うためです。
しかし紡錘体は図2のように第一極体から離れた位置に存在することがあり、そのような卵子に通常の顕微授精を施行すると紡錘体を傷つけてしまう恐れがあります。
ポロスコープは、特殊なフィルターとレンズを用いることで紡錘体を図3のように可視化することができるため、紡錘体の位置を確認しながらの顕微授精が可能となり、顕微授精の安全性を高めることができます。