診療・治療
【要旨】
子宮内膜症性卵巣嚢胞(以下チョコレート嚢胞)は卵巣、卵管、骨盤腹膜の炎症、癒着による卵子ピックアップ障害や性交痛による性交障害などの一般不妊の問題となるだけでなく、体外受精における成績の低下が報告されている。近年、卵巣機能評価に血中抗ミュラー管ホルモン(Anti mullerian hormone:以下AMH)値が臨床応用されており、前卵胞数や刺激に対する卵巣反応の予知として用いられている。チョコレート嚢胞合併の有無別にAMHを用いて卵巣機能を評価し、また体外受精の治療成績を比較したところ、チョコレート嚢胞合併患者と非合併患者の間ではAMHには大きな差がないが、チョコレート嚢胞の手術歴のある患者ではAMHの低下がみられた。
また体外受精の成績ではチョコレート嚢胞合併症例と非合併症例では卵の質に悪影響を与えないが、チョコレート嚢胞合併症例では流産率が高く、妊娠継続においてマイナスの影響を及ぼしていることが示された。挙児希望のある女性でチョコレート嚢胞の治療を選択する場合は卵巣機能温存と、病状の進行にともなう不妊や悪性化リスクに注意し、また不妊治療の観点のみならず不育治療の観点も持って診療に望む必要があることが示唆された。