診療・治療
【発表の概要】
【目的】近年、生殖補助医療(ART)において妊娠に至った症例の予後調査において、凍結融解胚移植(frozen-ET)にて妊娠に至った児は、新鮮胚移植(fresh-ET)にて妊娠に至った児と比較し、出生児の平均体重が重いという報告がある(Hum.Reprod 2010)。そこで、今回我々は、ARTにおいて妊娠に至った症例の予後調査を実施したので報告する。
【方法】2005年1月~2009年12月で当院ARTにおいて、単胎妊娠に至った2318例を対象とし、出生児の平均体重について検討した。
対象の内訳は、fresh-ETは520例で、体外受精(fresh-IVF)332例、顕微授精(fresh-ICSI)188例であった。frozen-ETは1798例で、体外受精(frozen-IVF)1238例、顕微授精(frozen-ICSI)560例であった。
【結果】出生児の平均体重は、fresh-IVF で2926.1g fresh-ICSI で2939.4g、frozen-IVF では、3069.3g、frozen-ICSI で3039.0gであった。出生児の平均体重は、frozen-IVF とfrozen-ICSIは、fresh-IVF とfresh-ICSIと比較し有意に重かった。(p<0.05)
【結論】出生児の平均体重は、体外受精と顕微授精との間での差は認めなかったが、近年の報告と同様に、凍結融解胚移植では、新鮮胚移植と比較し有意に体重が重くなる事が示唆された。
【考察】出生児の体重に影響を与える要因として、母体の年齢や身長、体重、BMI値や出産週数などが考えられているが、近年、ARTにおける培養液や移植方法においても影響を与えるとの報告がある。そのメカニズムはまだ明らかではないが、今後のARTの安全性を考えていく上で重要であると考えられる。