診療・治療
【要旨】
Testicular sperm extraction (TESE)症例104組を対象としTESE-ICSIの有用性について検討した。TESE-ICSIの適応は、非閉塞性無精子症64例(非閉塞群),閉塞性無精子症32例(閉塞群),脊椎損傷などによる射精障害8例(射精障害群)であった。精巣内精子回収率、受精率、分割率、着床率、妊娠率について評価した。非閉塞群,閉塞群,射精障害群においてTESEにより精子を回収できた症例は、それぞれ35.9%(23/64),100%(32 /32),100%(8/8)であり、非閉塞群で有意に低かった。卵子あたりの受精率はそれぞれ53.0%(176/332)、62.9%(332 /528)、52.4%(54/103)であり閉塞群で有意に高かった。分割率はそれぞれ81.8%(144/176),91.3%(303 /332),98.1%(53/54)となり、非閉塞群で有意に低くなった。着床率(20.6%,15.2%,11.1%)および移植周期あたりの妊娠率(34.4%,28.2%,31.3%)は三群間で有意差は認められなかった。閉塞群および射精障害群ではTESEにおいて全症例にて精子が回収され、良好な妊娠率が得られ有用な治療法であることが示された。しかし、非閉塞群では移植当たり妊娠率は他群と比較して同率であるものの、TESEによる精子回収率が不良であるためTESE治療周期当たりの妊娠予後は他群より不良であることが示された。