診療・治療
【要旨】
卵管鏡下卵管形成術(以下FT)は、卵管性不妊症の治療に用いられその有効性が報告されている。そこで当院で実施したFT症例の術後予後をFT時に観察した卵管内所見別に後方視的に検討した。さらに術後妊娠群と非妊娠群との間でFT前後の卵管通過性を比較し、FTによる卵管通過性の改善の有無が術後予後に及ぼす影響を検討した。対象は2006年1月から12月までの間に卵管性不妊の診断のもと、外来FTを実施した205例である。平均年齢は31.9歳で、平均不妊期間は2年4カ月であった。FT後の妊娠例は63例(30.7%)であり、術後妊娠に至るまでの期間は平均4.3カ月(手術周期0カ月から最長 16カ月)であった。非妊娠群142例のうち43例はIVFへ移行し、38例(88.4%)は3周期以内で妊娠に至った。FT後に卵管通過性の改善した群において有意に妊娠例が多く得られたが、改善が見られなかった群にも妊娠例が存在した。両側卵管閉塞の診断のもとFTを実施した症例においては、膨大部の卵管内ヒダの所見が良好であった群に妊娠例が多く得られた。不妊原因の検討では、非妊娠群においては他の不妊因子を合併している頻度が有意に高かった。以上より、術後卵管通過性に改善が認められない例や卵管内ヒダ所見が不良である例、また卵管因子以外の不妊原因を合併している症例ではFT後の予後は不良であることが明らかとなり、早めのステップアップを検討する必要があることが示唆された。