診療・治療
【背景】不妊患者の約20%は原因不明の不妊であり、原因解明が求められている。卵成熟機構には未解明の部分が存在し、不妊原因が卵の異常によるものである場合には現在の医療では治療できないことが多い。
【目的】本研究では体外受精反復不成功患者を対象に遺伝子の変異がもたらす不妊として減数分裂に関連する遺伝子に焦点を当て、不妊原因となる遺伝子変異を見つけることを目的とした。【方法】体外受精反復不成功患者25人と自然妊娠出産者10人の血液からDANを抽出し、次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子変異の網羅的解析を行った。自然妊娠出産者に存在しないHigh impactな変異を抽出し、8.3JPNデータベースの対象群間のアレス頻度間の有意差検定を行った。さらに、ハーディワインベルグ平衡(HWE)を算出し、Human Genetic Variation Database (HGVD)から算出したHWEとの比較検定を行った。
【結果】体外受精反復不成功患者を対象に、次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子変異の網羅的解析を行った結果、自然妊娠出産者10人に存在しないHigh impactな変異が57の遺伝子に存在し、これらの遺伝子のうちの7つにおいて、患者群と対照群間のアレル頻度に有意な差が検出された。また、完全不妊が存在しない状態でHWEが成立すると仮定した場合、8つ遺伝子において対象患者における実測値とHGVDからの計算値に乖離が生じていることが判明した。
【結論】piRNA経路の遺伝子であるRNF17とHippoシグナル経路の遺伝子であるWWER1が、反復的なARTの失敗の最も可能性のある原因であると考えられ、大型データベースを利用した大規模解析による確認が必要となった。