診療・治療
【目的】 高度生殖補助医療の中で、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)が有効な手段となることが期待されている。しかし、現在PGT-A を行うためには胚から栄養外胚葉(TE)を物理的に採取(生検)する必要があり、高度な技術が求められる。またこの操作は胚に対し侵襲的であり、胚の状況や生検の手技によっては、胚に与えるダメージが懸念される。近年、胚を培養した培養液を用いて胚の数的異常を間接的に調べる非侵襲的なPGT-A(niPGT-A)が注目されている。そこで本検討では胚培養後の培養液とTE、胚盤胞それぞれの解析結果の一致率を正倍数性及び異数性の観点から比較検討したので報告する。
【方法】 研究利用の同意が得られた凍結初期胚50個を融解後、Day4までは共培養し、その後10µlの培養液にメディウムチェンジを行い、個別培養を実施した。Day6で胚盤胞に到達した33個に対してTE 生検を実施した。TE、生検後の胚盤胞、個別培養後の培養液をそれぞれ回収し、次世代シーケンサーによる染色体解析を検査会社へ委託した。なお、解析した培養液33サンプルのうち、DNA増幅不良やノイズと考えられるデータは除外した。
【結果】培養液の解析結果におけるTEとの一致率は75.0%(18/24)、胚盤胞との一致率は75.0%(18/24)であった。TEの解析結果が正倍数性であったときの培養液との一致率は64.3%(9/14)、異数性では90.0%(9/10)であった。同様に胚盤胞の解析結果が正倍数性であったとき培養液との一致率は71.4%(10/14)、異数性では80.0%(8/10)であった。
【結論】 TEおよび胚盤胞の解析結果が異数性であった場合における一致率が高値であった。しかしながら一方、正倍数性であった場合の一致率はそれより低値となった。一致率が低下する原因として、細胞外に排出されたアポトーシス由来細胞のDNA等の影響などが考えられた。本検討結果よりniPGT-Aを臨床応用するためには、更なる検討が必要であると考えられた。