診療・治療
【目的】卵巣機能低下症例におけるARTでは、卵巣刺激低反応や早発LHサージ、空胞発生等により、理想的な結果が得られないことが多々あり、その改善のための工夫の一つとして、プロゲスチンによりLHサージを抑制しつつ卵巣刺激を行うPPOS法が注目されている。当院の現状について検討した。
【方法】2018年から2022年5月まで当院で採卵を行ったAMH1.2ng/ml未満の症例のうち、CD3のLHが10.0mIU/ml以上の高LH症例604例を抽出し、採卵数、空胞および排卵済症例の発生率、早発LHサージ発生率、胚培養成績について検討した。
【結果】PPOS法(41例)、アンタゴニスト法(13例)、マイルド法(550例)各々の採卵時平均年齢は38.3±3.8歳, 38.1±3.6歳,41.2±3.5歳、AFCは5.35±1.8, 4.8±2.5, 1.6±0.7、採卵数は3.9±2.2個, 4.3±2.3個, 1.4±1.4個、空胞発生率は0%, 0%, 20%、排卵済症例は0%, 0%, 3.1% であり、マイルド法と非マイルド法間で有意差がみられた。尚、早発LHサージはPPOS法では皆無であったがアンタゴニスト法では2例(15%)、マイルド法で卵獲得不能110例中32例(29%)認めた。PPOS法およびアンタゴニスト法における胚盤胞発生率は50.7%(35/69), 13.3%(4/30) (P<0.01)、良好胚盤胞率は62.2%(23/37), 75.0%(3/4)(n.s)であった。
【結論】卵巣機能低下症例においては早発LHサージを懸念し頻繁な診察や急な採卵決定を余儀なくされるケースが多い。LH基礎値が高くてもAFCが多い際にはPPOS法を選択することで、早発LHサージを心配することなく卵巣刺激を行え、また早期黄体化予防効果による胚質の改善から良好な採卵成績が得られる可能性が示唆された。