診療・治療
【目的】当院が2021年本学会で発表したサプリメント摂取状況のうち、葉酸のサプリメント摂取率は74.4%であった。神経管閉鎖障害のリスク低減のためにはさらに葉酸栄養補助食品の摂取が必要である。そこで今回、初診患者とART実施患者の葉酸・神経管閉鎖障害に関する知識状況を比較することで、情報提供の必要性を考える機会とした。
【方法】 2021年9月~2022年4月に受診した初診患者とART実施患者のうち、同意を得た患者に対して、葉酸・神経管閉鎖障害の知識状況、葉酸サプリメント摂取に関するアンケートを行った。
【結果】初診患者97名、ART実施患者98名、計195名から回収した(回収率30.0%)。年齢はそれぞれ35.7歳、38.0歳、不妊治療期間は1.7年、4.2年であった。「葉酸の栄養素の認知」は初診患者89.3%、ART実施患者96.9%であった(p=0.08)が、「葉酸を含む食材の認知」は52.6%、66.3%であり(p=0.05)、認知している人の葉酸食材の正解率は100%であった。「神経管閉鎖障害の認知」は27.8%、30.6%であった(p=0.66)。「神経管閉鎖障害リスク低減のために葉酸が推奨されている」と知っているのは34.0%、40.8%であった(p=0.33)。「リスク低減のために葉酸栄養補助食品を摂取する時期」を「妊娠1か月以上前」と知っているのは61.9%、75.5%で(p<0.05)、「わからない」と返答した人は36.1%、24.5%であった。葉酸サプリメント摂取率は58.8%、69.4%であった(p=0.12)。
【考察】初診患者よりART実施患者の方が、葉酸の認知の割合は高くなっており、受診を重ねるうちに説明を受けている機会があることを伺わせた。葉酸を含む食材の認知が5~6割であったことから、より食材の理解を促したい。葉酸栄養補助食品の摂取時期を「妊娠1か月以上前」と知っているものの、その理由を神経管閉鎖障害のリスク低減のためと知らない人も5~6割みられたため、関連性を伝えていきたい。