診療・治療
【目的】2022年4月から人工授精などの一般不妊治療、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療について、新たに保険適用されることになった。保険適用のメリットは治療の負担軽減、デメリットは最先端の医療や薬剤の使用ができないなどがあるが、実際患者の反応がどの程度みられたか知ることで、今後の情報提供や治療・ケアに役立てる機会とした。
【方法】 2022年5月~6月に不妊治療を受けている患者を対象に不妊治療保険適用に関する内容をWebにてアンケートを実施した。Webでの返信にて、アンケートを承諾したとみなした。
【結果】無記名にて計290名から回収した。年齢は36.8歳(±4.8歳)、不妊治療期間は3.1年(±2.3年)であった。4月以降に保険適用の治療を行った患者は71.7%で、「一般不妊治療」46.6%、「生殖補助医療」42.3%、「両方」11.1%であった。「保険適用に年齢制限がある」ことを知っている人は88.6%であった。年齢制限があることに対して42.4%の人が「妥当でない」と返答しており、「妊娠の可能性があるなら制限しないでほしい」「平等でない」との意見が多かった。「妥当でない」と返答した人を年齢別に比較すると、「40歳未満」「40-42歳」「43歳以上」でそれぞれ36.1%、51.0%、67.6%であった(p<0.01)。保険適用後に「経済的負担感が軽減した」と返答した人は、86.5%であり、治療別に比較みると「一般不妊治療」86.6%、「生殖補助医療」87.5%、「両方」82.6%であった(p=0.83)。4月から保険適用されるに当たって、開始を4月まで延期していた人は38.0%であった。保険適用治療に関して、「治療計画書がわかりにくい」12.5%で、「不妊治療の説明がわかりにくい」と返答した人は16.9%であった。保険適用のメリットは「高額療養制度を利用することによって自己負担額を抑えることができる」が最も多く、次に「次の治療を考えやすくなった」であった。デメリットは「保険適用での年齢や胚移植の回数が決められている」が最も多く、次に「先進医療が限られている」であった。
【考察】保険適用による経済的負担感は多くの人が軽減しており、治療別の負担感は変わらなかった。保険適用に年齢制限あることに対して「妥当でない」と約4割の患者が返答しており、年齢増すほど妥当でないと感じていた。また、保険適用治療に関して、「治療計画書がわかりにくい」「不妊治療の説明がわかりにくい」と返答した人は約1割おられたことから、今後、保険適用治療に関する内容の理解を深めるために、動画作成や説明文章や方法、相談できる窓口の検討を考えたい。