英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

  • 受精とその障害 中外医学社
  • 2022年11月25日 P89-P92
  • ICSIの適応
  • 江夏徳寿 塩谷雅英

卵細胞質内精子注入法(Intracytoplasmic sperm injection: ICSI)は体外受精における受精方法として1992年に発表されて以降、広く普及している。高度乏精子症や無精子症における精巣内精子採取術(Testicular sperm extraction: TESE)での回収精子など、通常の体外受精(In vitro fertilization: IVF)では受精困難な高度男性不妊症例において特に有効な手段である。

ICSIの適応は日本産婦人科学会の会告において「難治性の受精障害で、これ以外の治療によっては妊娠の見込みがないか極めて少ないと判断される場合」と規定されている。高度乏精子症などの男性因子症例においては、IVFよりもICSIの方が受精率、妊娠率ともに有意に高いことは1990年代から知られており、ICSIの適応として広く使用されてきた(1)。

一方、近年では各施設におけるICSIの適応が拡大する傾向にあり、不要な症例にもICSIを行っている可能性も示唆されている。実際に本邦におけるICSIの治療周期数は2003年にIVFを上回り、2017年にはIVF周期の1.5倍を超えている(2)。この傾向は海外でも認められており、アメリカの体外受精におけるICSIの割合は1996年の36.4%から2012年は76.2%へと倍増している(3)。その理由として、男性因子以外に対するICSIの施行症例が増えていることがあげられる。ICSIでは一般に受精率が80~90%でありIVFの70~80%と比べて高いため、ICSIと比べて勧めやすい。しかしながら、男性因子のない症例におけるICSIはIVFと比べて優位性を認めないという報告も多く、適応には慎重な判断を求める声もある(4)。本項ではICSIの適応について述べたい。

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