診療・治療
【背景・目的】当院では2015年に江夏らによりクラインフェルター症候群(KS:Klinefelter Syndrome)を含むMD-TESE(Microdissection Testicular Sperm Extraction)による精子回収率について報告を行ったが、その後の治療成績については解析を行っていなかった。そこで、今回はKS男性のその後の治療成績をまとめることを目的とした。
【対象・方法】2011年以降に採卵を行ったKS男性14症例の胚培養成績と妊娠予後について診療記録をもとに解析を行った。
【結果】14症例(37周期)の採卵において、受精率79.1%(189/239)、正常受精率57.3%(137/239)、正常受精における胚盤胞発生率32.3%(21/95)であった。また、13症例(40周期)の胚移植において、移植当たりの妊娠率30.0%(12/40)、流産率25.0%(3/12)であった。妊娠継続までに要した採卵、移植回数はいずれも最大3回であった。
【考察】正常受精率は従来の報告と同等な成績であったが、胚盤胞発生率は低率となった。一因として、当院では精子数が少ないKSに対し、採卵で得た胚をできるだけ移植できるよう初期胚移植を実施していることが背景にあると思われる。一般的に初期胚移植は胚盤胞移植よりも妊娠率が低率であるが、当院では結果的に3回までの採卵、移植で症例当たり64.3%(9/14)が妊娠継続に達している。このことから、症例や治療経過によっては初期胚による治療も考慮すべきであると考えられた。
【結語】保険適用により、不妊治療の費用面のハードルは著しく下がっている。しかし、限られた精子と限られた保険適用の回数の中で挙児を得るためには治療周期ごとに患者に合わせた工夫が必要である。
Keyword:クラインフェルター症候群