診療・治療
生殖補助医療を選択したカップルは、大きな期待を寄せて治療に望んでいる。事前に、医療者は受精が成立しない可能性について説明をしているものの、実際に受精卵を得る事ができなかった場合には大きなショックを受ける事になる。今回の講演では、まず、このような「受精できない」ケースを極力減らすための当院の工夫について発表する。
IVFでは精液所見からは予測できない「受精できない」症例に遭遇することが少なく無い。そこで「受精できなかった」場合の患者の落胆を考え、Split ICSIを含めICSIを選択することで、そのリスクを回避する方法もあるが、本来は必要としない症例にもICSIを実施してしまう可能性が否めない。当院では精液所見を緻密に解析しIVFとICSIの適応を決定することで、4個以上採卵できた場合にIVFで「受精できない」症例の割合を1%前後にとどめることができている。これは、ICSIで「受精できない」症例の割合と同程度であった。
次に受精障害症例への当院の実際の対応について述べる。IVFで受精率0%であった症例には次回の治療でICSIを実施することでほぼ全例に良好な受精率を得る事ができている。ICSIでも受精できなかった症例には次回の治療でICSI後にCaイオノフォア等を用いた人為的卵活性化を行い、46.2%の受精率を得ている。最後に、「受精できず」落胆している患者、あるいはその他の理由で治療に行き詰まっている患者のメンタル面での当院のサポート体制について述べる。