診療・治療
【発表の概要】
【目的】
体外培養や凍結融解手技よって胚透明帯が硬化するという報告は多く、移植前には補助孵化療法(以下AH)が広く行われている。一方で、AH実施後の胚孵化に関する報告は少ない。そこで、今回我々はタイムラプス解析を用いて、凍結融解後の分割期胚におけるAHが、その後の胚の孵化に与える影響について検討した。
【方法】
患者から同意を得た廃棄予定の採卵後2日目(Day2)胚44個を研究対象とした。Vitrification法にて凍結保存していたDay2胚を融解し、非AH(コントロール)群22個とAH群22個に分けた。AH群にはZILOS-tk Zona Infrared Laser Optical System(Hamilton Thorne)を用いて透明帯の1/2にAHを実施した。その後、リアルタイム観察システムCCM-IVF SMA30(ASTEC)を用いて継続培養および観察を行った(Day2-Day7)。培養液はGlobal(Life Global社)を使用し、6% CO2、5%O2、89%N2環境下で培養した。検討項目は、孵化開始胚盤胞および孵化を完了した胚盤胞の割合、孵化開始から孵化完了までの平均拡張収縮回数である。【結果】非AH群とAH群における平均年齢、平均ART回数及びIVFとICSIの割合には有意差を認めなかった。非AH群とAH群で孵化を開始した胚盤胞は22.7%(5/22)と54.5%(12/22)、孵化を完了した胚盤胞は9%(2/22)と36.4%(8/22)であり、AH群が非AH群と比較して有意に高くなった。胚盤胞の平均拡張収縮回数とSEMは、孵化開始前で2.2 ± 0.14 と1.5 ± 0.10、孵化開始後孵化が完了するまでは3.5 ± 0.35 と2.6 ± 0.21となり、非AH群とAH群において有意差を認めなかった。
【結論】
本検討から、Day2で凍結保存していたヒト胚を融解後にDay7まで継続培養した場合、孵化を完了する胚はごく少数であることが明らかになった。また、補助孵化療法はこれら凍結融解胚の孵化を促進させる事が示され、凍結融解胚移植におけるAHの有用性が示唆された。