英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第77回兵庫県産婦人科学会

  • 精巣内精子を用いた顕微授精治療にて妊娠に至ったKlinefelter症候群の一例
  • 平成15年7月6日 神戸市医師会館本館ホール
  • 第77回兵庫県産婦人科学会
  • 北川 勝、後藤 栄、塩谷 雅英(英(はなぶさ)ウィメンズクリニック)
    合田 上政、土橋 正樹、岡田 弘(神戸大学腎泌尿器科)
    杉並 興、野々垣 比呂史(公立豊岡病院産婦人科)

【発表の概要】

Klinefelter 症候群の患者を夫とするカップルは、従来挙児が非常に困難であると考えられていた。今回我々は同カップルにTESE-ICSI を施行し、妊娠の成立に至ったのでここに報告する。
 
症例は28才男性、精液検査にてazoospermia 判明した為に染色体検査を施行、non-mosaic タイプのKlinefelter 症候群と判明した。十分なるinformed consent ののち、夫婦二人が夫の精子を用いた挙児を強く希望したために治療が開始された。まず神戸大学腎泌尿器科にてTESEが施行され、成熟精子が採取可能であることを確認の上、摘出精巣組織を凍結しストックとした。その後妻に採卵を行い、凍結融解精子を用いてICSIを施行した。受精率 88.9%と良好な成績のもと、2段階胚移植を施行し妊娠に至った。現在妊娠16週にて良好に妊娠継続中である。
 
今回を含めて近年では、重度男性不妊症患者においてもICSI を用いることにより妊娠可能性が広がり、不妊症に悩むカップルには福音となっている。ただし患者が染色体異常の保持者の場合、現在のICSIの技術において異常精子を完全に選別できているとはいえず、頻度的には少ないものの、この異常が継代される可能性は否定できない。患者カップルへの正確な情報提供によるinformed consentが大切であるとともに、出生前診断を含めた社会的・倫理的な指針の整備が必要であると思われた。
 
また今回の症例は凍結精巣精子を用いたICSI による妊娠例であり、今後凍結保存精子の遜色ない有効性が証明されればTESE-ICSI の利便性がさらに向上するものと思われる。

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