診療・治療
【目的】
卵管性不妊症の治療に対してFalloposcopic tuboplasty(以下FT)の治療の有用性は多くの施設で検討され成績は報告されている。FTの利点は、技術習得が出来れば、腹腔鏡を併用することなく外来にておこなうことができること、卵管近位端病変に有効であることである。当院では2003年からこの治療を開始して約1500件の症例を経験している。今回はFT後の妊娠成績について検討し、FTからARTへ移行する適応および至適時期についても考察をくわえる。【方法】2005年1月から2010年12月までの症例のなかで、両側閉塞・片側閉塞片側狭窄・両側狭窄の症例の852例である。診断は、HSG、子宮鏡検査、通水の3種類の検査方法にて判断し、外来にて6カ月以上経過をみても効果のないかたである。FTカテーテルシステム(ファロプラスト、テルモ社)を使用し外来管理で、麻酔は静脈麻酔で実施した。年齢は22歳から49歳で平均年齢33.5歳であった。この検討の適応外は卵管水腫・高度の卵管因子、ARTからFTへのステップダウン例とした。
【結果】
FT後の妊娠率は29%(253/852)であった。妊娠はFT直後周期からおこり、最長 ケ月までであった。流産症例は7.5%(19/253)であり、子宮外妊娠例は1.6%(4/253)であった。年齢別妊娠率をみると年齢に従って低下したが、38歳までは22%以上を保った。最高年齢での妊娠は41歳であったが、流産となった。妊娠に至るまでの平均期間は3.5カ月であり、FT後1カ月目からの妊娠例が多かった。累積妊娠歴をみてみると6カ月以内に85.7%(216/252)が妊娠されていた。その後妊娠しなかった例の経過を確認したところ210例ARTを実施して82.7(82.4%)で妊娠している。
【結論】
卵管性不妊に対してART治療は一般的であるが、ARTに移行する前にFT治療をすることが必要である。FT処置により子宮外妊娠率は上昇しないことがわかった。FTは卵管性不妊で一般治療希望であれば40歳以内で施行をすすめることができる。FT後6か月以内に妊娠にいたらない場合にはご家族と相談しART治療へ移行することを考慮するのが望ましい。