診療・治療
【目的】
初期胚を凍結し、胚盤胞まで育てても全部の胚が胚盤胞にならない症例も経験する。この場合、初期胚を移植することになるが胚盤胞に発生しなかった群と発生した群の凍結融解初期胚移植の妊娠率に差があるか否かを調べた。
【方法】
対象は2009年一年間に排卵誘発によるART例で、3個以上を継続培養し胚盤胞にならなかった例A群75例。胚盤胞まで育った例を非良好胚盤胞B-1群80例、良好胚盤胞B-2群105例にわけた。良好群とはGardner分類でG3AA以上かつG4でCを含まないと定義した。後方視的検討である。
【結果】
各群の背景因子に差を認めなかった。受精率、分割率はそれぞれ、A群53.0%(271/512)、84.9%(230/271);B-1群72.1%(707/981)、91.2%(648/707);B-2群72.3%(1378/1613)、82.3%(1134/1378)であった(受精率でA群vsB-1群、A群vsB-2群;P<0.01)。着床率、臨床妊娠率および流産率はそれぞれA群で9.3%(7/75)、6.7%(5/75)、28.6%(2/7);B-1群で26.3%(21/80)、20.0%(16/80)、23.8%(5/21);B-2群41.0%(43/105)、31.4%(33/105)、23.3%(10/43)であった(着床率と臨床妊娠率共にA群vsB-1群、A群vsB-2群;P<0.01)。妊娠に至らなかったA群の中でその後ART治療をおこなった47周期でその後の妊娠予後を調べた。排卵誘発にて55.3%(26/47)が胚盤胞に発生し、そのうち良好胚盤胞は19.1%(9/47)、臨床妊娠率は38.3%(18/47)、流産率は8/18(27.8%)であった。
【結論】
継続培養後の胚盤胞発生状態により凍結融解初期胚移植の妊娠率が違うことがわかった。胚盤胞にまで発育しなかった群の融解初期胚移植の臨床妊娠率は6.7%と低かったが、その後のART治療で55.3%に胚盤胞を得ることができた。初回ART治療で胚盤胞に育たなかった場合でも、十分に再ART治療を勧めることができることがわかった。