研究開発・学会発表

【発表の概要】

 

【目的】

胚盤胞移植において、胚移植前にhCGを添加した培養液(hCG500IU)を子宮内に注入することで妊娠率が上昇したという報告がある(Mansour et al., 2011)。当院は以前より胚盤胞移植の際に、着床率向上の目的で移植3日前に培養液の子宮内注入を施行していることから、その培養液にhCGを添加し、子宮内に注入することで妊娠率が改善するか検討をした。
 

【方法】

2012年5月～8月にホルモン調節周期の月経(以下CD)20に凍結融解胚盤胞のGardner分類グレード3以上を1個移植した80周期を対象とした。
CD17にhCG500IUを添加した培養液40μlを子宮内注入するhCG＋群(n=43)と、hCGを添加していない培養液を40μl子宮内注入するhCG－群(n=37)の2群に無作為に分け、CD20に胚盤胞移植を行い化学妊娠率と臨床妊娠率および出産率を検討した。
 

【結果】

hCG＋群とhCG－群の平均年齢は、36.3歳±4.7と35.4歳±4.2であり有意な差は認めなかった。化学妊娠率は、hCG＋群とhCG－群で69.8%(30/43)と48.6%(18/37)(p=0.05)、臨床妊娠率は、hCG＋群とhCG－群で48.8%(21/43)と29.7%(11/37)(p=0.08)となり、hCG＋群はhCG－群と比較し化学妊娠率および臨床妊娠率が高い傾向にあった。出産率は、hCG＋群とhCG－群で34.9%(15/43)と27.8%(10/37)となり差を認めなかった。

【結論】

化学妊娠率および臨床妊娠率が、hCG＋群ではhCG－群と比較し高い傾向にあったことから、CD17でhCGを添加した培養液を子宮内に注入する事で、胚の着床能が向上する可能性が示唆された。一方で、出産率には差を認めなかったことから、今後症例を追加し出産率まで慎重に経過を見ていきたい。