診療・治療
【発表の概要】
【目的】
近年、生殖補助医療(ART)により妊娠に至った症例の予後調査にて、培養液の違いにより出生児の平均体重が異なることが報告された(Hum Reprod, 2010)。そこで当院のARTにより妊娠に至った症例においても同様の傾向があるか検討を行った。
【方法】
2005年1月~2009年12月に胚盤胞の単一凍結融解胚移植を用いて妊娠し、単胎児出産の転帰のあった528周期を対象とした。検討した培養液はLife Global社global medium(global)とOrigio社BlastAssist System1/BlastAssist System2(BAS1/BAS2)、検討項目は母体の移植当時の年齢・身長・体重、及び在胎日数、移植胚の良好胚盤胞率、児の出生時の平均身長・体重であった。
【結果】
母体の移植当時の年齢・身長・体重、及び在胎日数、移植胚の良好胚盤胞率、そして児出生時平均身長には、globalとBAS1/BAS2に差を認めなかった。一方で児出生時平均体重(g)は、globalで3054.3±446.9、BAS1/BAS2 で3138.5±404.9とBAS1/BAS2において有意に重かった(p<0.05)。
【考察】
本検討では、日本人全体の児の平均体重(3020g) と比較してBAS1/BAS2では重い傾向にあった。出生児の体重に影響を与える要因として、母体に関するものでは、年齢や身長・体重及び在胎日数などが考えられ、胚培養・移植方法に関するものでは、移植方法や移植胚が考えられるが、本検討ではこれらの項目に差を認めなかった。したがって、培養液内に含まれる成分の違いが体重差に何らかの影響を与えた可能性が示唆された。ARTにおいて培養液は必要不可欠であり、今後ARTの安全性を考慮していく上で培養液の組成にも着目し、慎重にフォローアップをしていく必要性が考えられた。