診療・治療
【発表の概要】
【目的】卵管性不妊に対する卵管鏡下卵管形成術(以下FT)の有用性が認められ、術後妊娠率は約35-40%といわれている。しかし、卵管通過性の改善に関連する因子の検討は殆どない。FT後HSGを実施し、卵管通過性改善度を術前卵管閉塞・狭窄別、FT操作時の抵抗別、卵管内ヒダ別および子宮鏡による卵管子宮口異常所見別に検討した。
【方法】対象はFTを施行しその前後HSGを実施し卵管通過性の改善の有無を確認した44例(88卵管)である。平均年齢は34.5歳であり検討は卵管別におこなった。HSGはレントゲン透視下でおこない、卵管が見え始めた圧(圧1)、卵管采を越えた時点の圧(圧2)を測定した。術後のHSGで注入圧低下が認められた例を改善とした。
【成績】FT により77%(67/88)の卵管通過性の改善を認めた。FT術前の狭窄卵管94%(32/38)、閉塞卵管は50%(25/50)通過性が改善した。卵管通過性改善例では圧1で平均72mmHg、圧2で平均57mmHgの低下があった。FT術中の操作抵抗強群では術後改善は25%(7/28)、抵抗弱群では88.3%(50/60)で有意差があった。(p<0.01)。卵管内ヒダ不良群は58.3%(14/24)、ヒダが正常群69.6%(39 /56)の改善を認めた。閉鎖卵管で卵管子宮口異常群は36.7%(11/30)、正常群は78.3%(18/23)の通過性改善が認められ(p<0.01)、狭窄卵管で卵管子宮口異常群は70.6%(12/17)、正常群では94.4%(17.18)の改善が認められた。
【結論】狭窄卵管では卵管通過性の改善は、閉塞卵管に比較し有意に高い。FT後の卵管疎通性改善に影響する因子は、卵管子宮口異常と術中のバルーン挿入時の強い抵抗であった。閉塞卵管に卵管子宮口異常あれば、卵管通過性改善率が低いので早期にARTへ進むなどの方針が必要である。