研究開発・学会発表

 

[発表の概要]

 

【目的】
ヒト顕微授精にあたっては、injection needleで卵細胞質膜を吸引する方法(以下c-ICSI)が広く用いられている。一方で、微細な振動を用いて穿破するpiezo-ICSIでは卵子に与えるダメージがc-ICSIよりも小さく、培養成績が向上する可能性があることが報告されている。|そこで今回我々は、c-ICSIとpiezo-ICSIの培養成績を比較することで、特に卵子が老化し脆弱になっていると考えられる高齢患者におけるpiezo-ICSIの有効性について検討したので報告する。
 

【方法】
2013年10月～2014年8月に成熟卵子が4個以上得られ、ICSIを施行した98周期847個の卵子を検討対象とした。症例ごとに成熟卵子を半数に分け、それぞれc-ICSIとpiezo-ICSIを施行した。検討項目は、受精率、ICSI後変性率、良好分割胚率、胚盤胞発生率、良好胚盤胞発生率とし、女性側の年齢別に比較検討した。
 

【結果】
全症例を対象として検討すると、c-ICSIとpiezo-ICSIの培養成績は、検討した全ての項目で有意差を認めなかった。年齢別の検討では、38歳～41歳の群では両者の培養成績に差がなかったものの、42歳以上の群ではc-ICSIとpiezo-ICSIでそれぞれ受精率75.0% (30/40)：81.1%(30/37)、ICSI後変性率12.5%(5/40)：8.1%(3/37)、良好分割胚率41.1%(12/29)：53.5%(16/30)、胚盤胞発生率25.0%(5/20)：60.9%(14/23)、良好胚盤胞発生率10%(2/20)：13%(3/23)となり、検討した全ての項目でpiezo-ICSIが勝り、特に胚盤胞発生率においてはpiezo-ICSIが有意に高率となった。(P =0.039)
 

【考察】
今回の結果からpiezo-ICSIが全ての症例に有効というわけではなく、高齢患者の卵子、特に42歳以上の症例に対しては、piezo-ICSIが有効であることが示唆された。