英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第56回 日本生殖医学会学術講演会・総会

  • 精子の評価法についての検討
  • 平成23年12月8日(木)、9日(金) パシフィコ横浜
  • 第56回 日本生殖医学会学術講演会・総会
  • 岸加奈子・片岡信彦・橋本洋美・千葉誠・黒田泰史・十倉陽子・山田聡・緒方誠司・水澤友利・松本由紀子・岡本恵理・苔口昭次・塩谷雅英


    英ウィメンズクリニック

【発表の概要】

【目的】
一般的に精液検査は光学顕微鏡下で精子濃度測定及び精子運動率測定、精子形態観察を中心に実施されている。当院では、日常業務の中でMAKLERTM COUNTING CHAMBERを用いた精液検査を行っている。この方法は精液希釈の必要がなく、簡便であり頻用されている。しかし、これらの一般的精液検査ではDNA fragmentationや先体反応の有無といった精子の質を評価する事はできない。
今回、我々は精子の質を評価する為の5種類の評価法(①Sperm chromatin dispersion (SCD) test、②Acrosomal Status and Sperm Viability(ASSV)、③TUNEL assay、④ATP assay、⑤Triple stain)を行い、これらの方法を日常の臨床業務に取り入れることが可能かどうか検討を行った。

【方法】
治療に供しない廃棄精液を用いた。
MAKLERTM COUNTING CHAMBERを用いて、一般的精液検査を実施した後、精子の質を評価する為の5種類の精子評価法による検討を行った。精子評価法の概要は以下の通りである。
①SCD test。精子核のDNA fragmentaitionを見る。halosperm○R (Halotech DNA)を使用。精子核周囲に拡散したfiber DNAが形成するhaloの状態により、DNA fragmentation率を測定する。本検討では、精子の染色にDiff-Quick染色を用いた。
②ASSV。精子の先体反応陽性率を見る。Lectin from Pisum Sativum(PSA)-FITC(Sigma)を使用。FITC標識PSAが先体反応に必要な精子表面の糖鎖と結合することで、先体反応が可能と推測される精子の頭部が蛍光を発する。本検討では死滅精子と鑑別を行う為にHoechst 33258を用いた。
③TUNEL assay。DeadEndTM Fluorometric TUNEL System(Promega)を使用。精子のapoptosis陽性反応を見る。apoptosisによって出来た3’-OH末端にfluorecein-12-dUTPを取り込ませる事により、apoptosis細胞におけるDNAの断片化を測定する。本検討では、核染色にDAPIを用いた。④ATP assay。ATP量を測定。精液のATP bioluminescent assay kit FLAA(Sigma)を使用。ルシフェラーゼ(ATPの存在下で発光する)を利用し精子に含まれるATP量を蛍光により定量する。ルミノメーターはGene Light GL-200S(株式会社マイクロテック・ニチオン)を使用。
⑤Triple stain。精子生存性と先体反応精子の検出を行う。トリパンブルー、ビスマルクブラウン、ローズベンガルを使用。生存精子、死滅精子を染色し、先体を染色する為、先体反応陽性精子は頭部が透明である。
 

【結果と考察】
  本検討で行った精子評価法の検査にかかる時間はそれぞれ①2時間②2時間③3時間④0.5時間⑤4時間だった。(表)
  また、①②③⑤は検査方法に染色工程があり、検査実施者間による個人差を生じやすい。また、検査時間もかかる為、検体数が多いクリニックでは、臨床でルーチンワークとして行うのは難しい。ただ、複数の検体を同時に検査出来る為、検体の取り違え防止を徹底出来れば、1検体あたりの検査時間は短縮できる。④に関しては、ルミノメーターを用いてATP量を定量する為、検査実施者間による個人差がない。
  今後は精液所見毎の結果やART施行患者の胚発生等の予後も検討する予定である。
 

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