診療・治療
【発表の概要】
【目的】
近年、タイムラプス観察システムにより、胚発生における動的解析が容易となっている。以前Embryo Scope® Time-lapse System(以下、Embryo Scope)を用いた胚観察により前核消失時間、第一分割時間および第二分割時間が胚盤胞発生または良好胚盤胞発生の予測因子として成り得ることを報告した(片田ら., 日本生殖医学会2013)。そこで、今回我々はそれらの予測因子と凍結融解胚移植後の妊娠率との関連性について検討を試みた。
【材料および方法】
検討対象:年齢38歳以下および採卵回数3回以下のICSI実施症例で、ICSI実施卵数が4個以上かつ全胚凍結を行った症例の凍結胚融解移植周期を対象とした(31症例、45周期)。検討期間:2012年12月~2013年12月。前核消失時間、第一分割時間および第二分割時間と凍結胚融解移植周期における妊娠率との関連性を調べた。
【結果】
28周期(28/45=62.2%)において化学的妊娠陽性であった。化学的妊娠陽性群および陰性群のICSI後前核消失時間、第一分割時間、第二分割時間の平均時間はそれぞれ、24.29h、26.97h、38.08h、および24.23h、27.76h、39.59hであった(両群間に有意差なし)。また、19周期(19/45=42.2%)に臨床妊娠が成立した。臨床妊娠陽性群および陰性群のICSI後前核消失時間、第一分割時間、第二分割時間の平均時間はそれぞれICSI後24.58h、27.18h、38.29h、および24.03h、27.32h、38.91hであった(両群間に有意差なし)。
【結論】
Embryo Scopeによる胚観察において、ICSI後の前核消失時間と第一分割時間および第二分割時間は胚盤胞発生、良好胚盤胞発生の予測因子と成り得ることを前回の本学会で報告したが、これらは化学的および臨床的妊娠の予測因子とはなり得ないことが示唆された。今後は症例を増やしてさらに検討したい。