診療・治療
【発表の概要】
【目的】Vitrification法は融解後の胚生存率は高率であるが、変性する胚も一部存在する。そこで融解のstep数を増やしSucroseの濃度勾配を緩和する事で、胚に対する障害を軽減し、胚生存率と妊娠率が向上するかどうか検討を行った。
【方法】2009年7月から2010年2月に995個の胚を融解し、単一胚移植を行った978周期を対象とした。凍結はVitrification法にて行い、融解時に使用するSucroseの濃度を1M→0.5M→0Mと3段階で漸減する群を3step群、1M→0.75M→0.5M→0.25M→0.125M→0Mと6段階で漸減する群を6step群とした。初期胚融解は3step群183周期と6step群172周期、胚盤胞融解は3step群318周期と6step群305周期に対してそれぞれ後方視的に比較検討した。
【成績】初期胚融解における平均年齢と平均ART回数は3step群で35.5±4.6歳と1.5±1.6回、6step群で35.9±4.3歳と1.4±1.1回で有意差はなかった。胚生存率と移植あたりの臨床妊娠率および心拍陽性率は3step群で96.8%(184/190) 、21.9%(40/183) 、19.7%(36/183) 、6step群で97.8%(175/179) 、19.2%(33/172) 、15.1%(26/172)でありそれぞれ有意差を認めなかった。胚盤胞融解における平均年齢と平均ART回数は3step群で36.0±4.2歳と1.8±1.8回、6step群で36.1±3.9歳と1.7±2.3回で有意差はなかった。胚生存率と移植あたりの臨床妊娠率および心拍陽性率は3step群で99.1%(318/321) 、40.9%(130/318) 、38.1%(121/318) 、6step群で100%(305/305) 、40.3%(123/305) 、36.4%(111/305)でありそれぞれ有意差を認めなかった。Gardner分類で凍結前にGrade4の胚盤胞が、融解3時間後にGrade4に回復した割合は3step群で19.1%(27/141)であるのに対し、6step群で37.0%(51/138)と有意に高かった。
【結論】胚融解のstepの数を増やすことにより、再拡張速度は速くなることが示されたが、胚生存率と妊娠率の向上は認められなかった。