診療・治療
【背景】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)はその原因や病態に糖代謝異常やインスリン抵抗性の存在が注目されており、臨床の現場でもインスリン抵抗性改善薬が治療に使用されその有効性が報告されている。しかしPCOSと診断されてもインスリン抵抗性は正常の症例も多い。
【方法】
当クリニックでPCOSと診断された生殖年齢女性100名を対象に、HOMA-IRを用いてインスリン抵抗性(IR)群(HOMAIR1.6以上)と非IR群(1.6未満)に分けて年齢、BMI、血中テストステロン、ゴナドトロピン、空腹時血糖(FBS)、インスリン値(IRI) HOMA-IR、HbA1c、AMHを検討した。
【結果】
IRの割合は26%と欧米にくらべ少なかった。IRと非IRではBMIに有意さがみられ、AMH、TではIR群に高い傾向がみられたがその他は有意な差がみられなかった。
【結論】
IR群の割合は諸外国の報告よりも少なくインスリン抵抗性の側面から見た場合、本邦と諸外国のPCOSの病態が異なる事が示唆された。AMHはIR群で高い傾向が見られ、高インスリン血症、AFC、AMHの相関についての報告と矛盾しないと考えられた。またIR群ではT値が高い傾向を認め、高インスリン血症が高アンドロゲン血症を惹起するとの報告に一致するものであると考えた。