診療・治療
【目的】
へパリンは従来thrombophiliaを伴う不育症患者の抗凝固療法として妊娠中に使われているが、近年、抗凝固作用に加え、胎盤形成促進作用、着床補助作用も報告されている。今回我々は、ホルモン補充周期での凍結胚融解移植症例に対し、判定日よりへパリンを投与し初期流産率が低下するかについて検討した。
【対象と方法】
2010年1月から5月において、当院にてホルモン補充周期にて凍結胚融解移植を施行後、判定日(4週1日)に血中β-hCG値が30mIU/mL以上150mIU/mL未満の症例のうち、患者の同意を得られた45例を対象とした。同日よりへパリン5000単位/日(カプロシン2500単位、1日2回12時間毎皮下注射)を開始し、以後のβ-hCG値の推移、妊娠経過(妊娠10週まで)を、へパリン非投与症例(2005年1月から2009年1月におけるホルモン補充周期凍結胚融解移植症例)をコントロール群とし、比較検討した。へパリン投与は妊娠経過が順調な症例は妊娠10週で終了とした。不育症症例は対象外とした。
【結果】
流産率は66.7% (30例/45例)であった(コントロール群81.1%(107/132),p<0.05 )。流産時期の内訳は、化学流産20例、胎嚢確認後流産5例、心拍確認後流産5例であった。β-hCG値別にみると、流産率は、<50mIU/mLで100%(9例/9例)(コントロール群95.1% (58/61))、50-100mIU/mLでは70.8%(17例/24例)(コントロール群91.2%(31/34), p<0.05 )、100-150mIU/mLでは33.3%(4例/12例)(コントロール群48.6%(18/37))であった。
【結論】
今回の検討では、コントロール群と比較し、全体で、かつhCG値が50-100 mIU/mLの群で有意に流産率の低下がみられた。へパリンが流産率の低下に有効である可能性が示唆された。今後症例を重ね、適応症例の選択、開始時期等について再検討していきたい。