診療・治療
【発表の概要】
【目的】精子側の要因がICSIの治療成績に与える影響を検討する目的で、高度乏精子症における精子濃度別の治療成績を後方視的に検討した。また精巣精子での治療成績も併せて比較検討した。
【方法】対象は、2000年3月から2010年4月までにICSIを実施した857周期で、卵子側の要因を小さくするため妻年齢を38歳未満とし、A-Eの5群に分けて検討した。A群;射出精子濃度100-500万/ml(n=257)、B群;10-99万/ml(n=151)、C群;<10万/ml(n=67)、D群(精巣精子);閉塞性無精子症(OA)(n=249)、E群(精巣精子);非閉塞性無精子症(NOA)(n=133)。
【結果】各群における受精率と胚移植あたりの臨床妊娠率は、A群;70.9% (935/1318), 33.5% (86/257)、B群;68.9% (584/847), 27.2%(41/151)、C群;61.1% (266/435), 34.3% (23/67)、D群;67.5% (1127/1669), 29.3%(73/249)、E群;61.2% (560/915), 28.6% (48/133)であった。受精率は、C群において、A群及びB群と比較し有意に低かった(P<0.001)(P<0.01)。また、E群はD群と比較し有意に低かった(P<0.01)。A-C群とD、E群の比較では、D、E群において有意に受精率が低かった(P<0.01)。胚移植あたりの臨床妊娠率は各群ともに30%前後であり、A群からE群間において有意差を認めなかった。A-C群とD、E群の比較でも有意差を認めなかった。
【結論】精子濃度500万/ml以下の高度乏精子症患者のICSIでは、精子濃度の低下は受精率に影響するが、胚移植あたり妊娠率には差が無かったことから、生じた胚のQualityには大きな影響を与えない事が示唆された。同様に、NOAではOAと比較し、受精率が低率となるが生じた胚のQualityには両者に大きな差が無い事が示唆された。