研究開発・学会発表

【発表の概要】

【目的】染色体に均衡型転座を有するカップルでは、胚の染色体不均衡を生じやすく流産を繰り返しやすい。流産を繰り返すことによる精神的・身体的ダメージは小さいとは言えない。今回、倫理委員会の承認を得て、相互転座を伴う習慣流産患者2例に流産のリスクを低減する目的でPGDを実施したので報告する。<症例1>妻39歳、夫40歳、3回経妊、3回とも流産。夫に46,XY,t(4;6)(p14;q15)と相互転座を認めた。<症例2>妻43歳、夫46歳、最近3回の妊娠はいずれも初期流産。妻に46,XX ,t(2;18)(q35;q23)と相互転座を認めた。
【方法】4〜8細胞期胚の1〜2割球を採取し、FISH法にて染色体の均衡性を検査した。割球採取後の胚は培養を行い、胚盤胞に発生し染色体均衡と診断できた胚を移植する予定とした。probeは、症例1ではVysis社のCEP 6、GSP社のSubtelomere 4p、Subtelomere 6qを用い、症例2ではVysis社のCEP 18、GSP社のSubtelomere 2q、Subtelomere 18qを用いた。
【結果】症例1では4胚から得られた割球にFISHを実施、全ての胚に染色体不均衡を認めた。割球採取後3胚が胚盤胞へ発生したが胚移植は実施しなかった。症例2は、8胚から得られた割球にFISHを実施、全ての割球に染色体不均衡を認めた。割球採取後5胚が胚盤胞へ発生したが胚移植は実施しなかった。
【考察】今回の2例では、染色体均衡胚を認めず胚移植出来ない、という結果であった。挙児という目的において治療は不成功であったが、流産を未然に予防できたという意味で有益であり、2例のご夫婦から喜んでいただけたことが印象的であった。流産を繰りかえすカップルにとっては、妊娠したいという思いと同じくらいに、流産を繰り返したくない、という思いが強いことを改めて認識させられた。