診療・治療
【発表の概要】
【目的】以前、我々は、ホルモン調節周期(以下HRT)の凍結融解胚移植で月経(以下CD)23日目の血中プロゲステロン(P値)が9ng/ml未満では9ng/ml以上と比較し妊娠率が低くなると報告した(妊娠率37.2%と57.6%)(日本受精着床学会雑誌2007)。その報告以降CD23のP値が9ng/ml未満の周期においては、プロゲステロン(P)製剤を追加している。そこで、CD23のP値低い症例に対してP補充を行うことにより妊娠率が改善したかどうか後方視的に検討した。
【方法】
2008年1月~2009年12月にGrade3BB以上の胚盤胞1個移植した335周期を対象とした。HRTはCD2よりエストロゲン製剤を漸増しCD15よりP膣座薬(600mg/日)とCD16からジドロゲステロン錠(15mg/日)の併用を基本とした。CD23のP値9ng/ml未満の周期にCD23からP製剤を追加した。CD23のP値9ng/ml以上だった群(A群)とCD23のP値7~9ng/ml でCD23からP製剤を追加した群(B群)のCD30のP値と臨床妊娠率を比較した。
【結果】
A,B群のそれぞれ平均年齢は、34.6±3.8歳、34.8±4.2歳で有意差認めず。CD23の平均P値はA群14.0±4.1ng/ml、B群7.0±1.2ng/mlでA群の方が有意に高かった。CD30の平均P値はA群13.0±5.2ng/ml、B群19.1±9.4ng/mlでB群の方が有意に高くなった。臨床妊娠率は、A群64.7%(176/272)、B群57.1%(36/63)、流産率は、A群18.8%(33/176)、B群22.2%(8/36)で有意な差は認めなかった(表)。
【結論】
CD23のP値が9ng/ml未満の症例に対してP製剤の追加により妊娠率は57.1%となり、2007年の報告(37.2%)にくらべ改善しており、9ng/ml以上の周期と比較し、臨床妊娠率及び流産率に差がないことが示唆された。