診療・治療
【発表の概要】
【目的】胚と子宮内膜はクロストークをしており胚は着床に向けて子宮内膜を修飾することや、胚培養液上清(ECS)にクロストークに関与する胚由来因子が存在することが報告されている。そこで胚盤胞移植前にECSを子宮腔内に注入するSEETの有用性をRandomized, controlled trialにて検討した。
【対象】初回採卵周期に全胚凍結を行い凍結胚盤胞が得られ研究参加に同意した144例を対象とした。
【方法】HRT 周期に融解胚移植を行った。移植胚数は1個とした。エントリーされた144例を、胚盤胞移植するBT群48例、培養液20μlをday17に子宮注入後 day20に胚盤胞を移植するST群48例、ECS 20μlをday17に子宮注入後day20に胚盤胞を移植するSEET群48例の3群に無作為に分けた。妊娠成績は各群をさらに移植胚のグレード別(Gardner分類)に3AA未満の胚(low grade胚)と3AA以上の胚(high grade胚)のサブグループに分け6群で検討した。SEETでは採卵周期に本人の胚を受精後2~5日目まで培養したECSを-20℃で凍結保存しておき用いた。
【結果】平均年齢、不妊期間、平均受精卵数、基礎FSH値は各群で有意差はなかった。low grade胚移植例で着床率、妊娠率はそれぞれ、BT群65.2%(15/23)、52.2%(12/23)、ST群47.4%(9/19)、42.1% (8/19)、SEET群60.9%(14/23)、39.1%(9/23)で有意差はなかった。high grad胚移植例で着床率、妊娠率はそれぞれ、BT群64.0%(16/25)、56.0%(14/25)、ST群75.9%(22/29)、69.0% (20/29)、SEET群92.0%(23/25)、80.0%(20/25)でSEET群はBT群より着床率および妊娠率が有意に高率だった。
【考察】初回ART症例で良好胚盤胞(high grade)の移植例ではSEETはBTより着床率および妊娠率が高いことが示された。SEETは胚盤胞が1個あれば遂行可能な方法であり、多胎を予防し、かつ胚由来因子による子宮内膜の胚受容能の亢進を期待できる方法であるため、有用な移植法となりうると考えられる。