診療・治療
【発表の概要】
【目的】卵管水腫は卵管内貯留液の子宮腔内流入による着床障害や胚発育障害等により胚移植後の着床率の低下をもたらす一因とされている。そこで卵管水腫に対する処置の有無および処置方法により妊娠率に差をもたらすかどうかを検討した。
【方法】当院にて2005年1月から2006年11月に胚移植を施行した卵管水腫合併不妊症患者42症例85周期を対象とした。卵管水腫に対する処置を行わずに移植した周期を無治療群、水腫内容液を超音波ガイド下に穿刺吸引後に移植した周期を吸引群、卵管切除後に移植を行った周期を切除群とした。
【結果】対象患者の平均年齢33.3±2.2歳、既往ART回数は、3.5±2.4回であった。無治療群68周期のうち妊娠に至った周期は16周期 (23. 5%)であった。初回移植時の妊娠率は30.6% (11周期/36周期)、2回目 13.6% (3/22)、3回目25.0% (2/8)、4回0% (0/1)、5回目0% (0/1)であり、累積妊娠率は移植3回目で100%となった。吸引群11周期中妊娠に至った周期は3周期(27.3%)であった。初回水腫吸引後の妊娠率は28.6% (2/7)、2回目0% (0/3)、3回目 100% (1/1)であった。切除群6周期のうち3周期は卵管水腫に対して先に処置をすることなく移植を行ったが妊娠に至らず卵管切除をした。他の3周期は採卵時に子宮腔内に液体貯留を認める等したために移植を中止し卵管切除を先行した。卵管切除後初回移植時の妊娠率は80.0% (4/5)、2回目 100% (1/1)であり、移植2回目までに全例が妊娠した。
【結論】卵管水腫合併不妊症患者に対して、水腫に対する処置をしなくても妊娠が成立する例もあるが、3回以上反復して着床障害が認められた場合には卵管切除を施行するのが望ましいことが示唆された。水腫内容液の穿刺吸引の有用性は認めなかった。