診療・治療
【発表の概要】
【目的】
リコンビナントヒアルロニダーゼはウィルス感染の危険性がなく、ウシ由来ヒアルロニダーゼと比較して製品の純度が高く、Lot間による製品間の差が無いという利点が報告されている。今回、我々はICSI施行時の卵子の裸化処理にウシ由来ヒアルロニダーゼとリコンビナントヒアルロニダーゼを使用し、その後の胚発生に及ぼす影響を前方視的に比較検討した。
【対象】
2008年8月~12月に採卵時の回収卵子が4個以上であり、ICSIを行った39症例、合計376個の卵子を検討対象とした。
【方法】
対象症例の卵子を無作為に2群に分け、A群(187個)はウシ由来ヒアルロニダーゼ(Irvine)を、B群(189個)はリコンビナントヒアルロニダーゼ (MediCult)を使用した。ピペッティング操作により卵丘細胞を剥離し裸化処理を行った後、ICSIを行った。
【結果】
症例の平均年齢±SDは37.2±4.1歳、平均採卵回数±SDは2.6±2.1回、平均採卵個数±SDは9.6±3.7個であった。A群とB群での成績はそれぞれ、平均裸化処理時間は59.9秒/個と67.3秒/個でありB群が、7.4秒/個長かった。ICSI卵当たりの変性率は9.5% と7.8%、ICSI卵当たりの受精率は70.9%と68.0% 、受精卵当たりの分割率は92.4%と97.1%、分割期胚当たりの良好分割期胚(Day2において4cell 且つVeeck分類グレード1,2及び5cell以上で且つVeeck分類グレード3以上を良好分割期胚とした)の割合は63.9%と71.3%、継続培養胚当たりの胚盤胞発生率は41.7%と45.7%、Day5における胚盤胞当たりの良好胚盤胞(GardnerとSchoolcraftの分類により、グレード3BB以上を良好胚盤胞とした)の割合は25.0%と 44.8%、Day5とDay6を合わせた良好胚盤胞率は23.3%と40.6%であった。全ての検討項目においてA群とB群で有意差は認めなかったが、分割率、良好分割期胚率、胚盤胞発生率、良好胚盤胞率はB群で高い傾向を認めた。
【結論】
ウシ由来ヒアルロニダーゼと比較してリコンビナントヒアルロニダーゼを使用することにより、裸化処理時間の延長を認めたが、分割率、良好分割期胚率、胚盤胞発生率、良好胚盤胞率は高い傾向を認めた。リコンビナントヒアルロニダーゼの有用性が示唆された。