診療・治療
【発表の概要】
【目的】卵管因子による不妊症は頻度が高く不妊症診療において重要な位置を占めている。高度の卵管障害に対しては、ARTによる治療が効果的であり広く普及しているが、治療に伴う精神的、肉体的負担、さらに経済的負担は必ずしも軽いとはいえない。近年、高度の卵管障害に対して卵管鏡下卵管形成術(以下FT)の有効性が報告されている。FTは、外来で実施する事ができ肉体的侵襲は軽度である。かつ保険適応もあることから経済的負担も比較的少ない。当院でも、平成13年より高度卵管障害による不妊症に対する治療としてFTを導入し、以来200例以上に実施し良好な成績を得ている。そこで今回、当院におけるFTの成績について検討したので報告する。
【対象と方法】平成15年1月から平成16年3月までに当院にてFTを実施した110例を対象として、年齢、不妊期間、卵管通過性回復率、妊娠率、FT後妊娠に至るまでの期間について検討した。
【結果】患者の平均年齢は33.2±5.0才、不妊期間の平均は4.1±3.7年であった。卵管通過性の回復は81.5%の症例において認められた。FT後6ヵ月以上の経過観察を行い得た症例における妊娠率は43.2%であった。また、FT後妊娠に至るまでの期間の平均は2.9±2.9ヵ月であった。FT後妊娠例のうち68.4%においては3ヵ月以内の妊娠であった。
【考察】高度卵管障害よる不妊症患者に対してFTを実施し、良好な成績を得、FTの有用性が確認された。FT後の妊娠の多くが3ヵ月以内という早期に成立していたことから、FTは高度卵管障害よる不妊症に対してARTによる治療を検討する前に試してみる価値のある治療の一つであると考えられた。