診療・治療
【発表の概要】
【目的】当院ではARTにおいて高齢症例やhMG連日投与にて発育卵胞数が少ないpoor responderに対して、クロミフェン単独、またはクロミフェン+hMGを用いた卵巣刺激を選択することが多い。クロミフェン単独、またはクロミフェン+hMGでの卵巣刺激の場合、採卵34~36時間前にhCG5000単位または酢酸ブセレリン300~600μgを投与している。そこで今回、hCGと酢酸ブセレリンの投与では、妊娠成績に差があるかどうかを後方視的に検討を行った。
【方法】クロミフェンまたはクロミフェン+hMGで卵巣刺激を行った症例のうち、2005年1月~2005年3月に採卵の34~36時間前にhCG5000単位を投与した89周期(hCG群)と、2005年3月~2005年5月に採卵の34~36時間前に酢酸ブセレリン鼻腔内噴霧した73周期(フレア群)を対象とした。
【成績】平均年齢はhCG群が39.3才、フレア群が39.0才であり、平均既往ART回数はhCG群が10.0回、フレア群が8.5回であり有意差は認めなかった。 hCG群とフレア群において、採卵時穿刺卵胞当たりの卵子回収率はそれぞれ63.2%(134/212)、59.1%(114/193)、回収卵数0個の周期の割合は20.2%(18/89)、13.7%(10/73)、ICSI施行時のMetaphaseⅡの卵子の割合は71.3%(67/94)、 74.3%(52/70)、ICSIでの受精率は80.6%(54/67)、78.8%(41/52)、IVFでの受精率は67.6%(23/34)、 78.4%(29/37)、分割期良好胚率は58.6%(41/70)、64.6%(42/65)、継続培養胚当たりの胚盤胞発生率は66.7%(2 /3)、50.0%(2/4)であった。クロミフェン使用により内膜がうすく移植に適さない症例や、他周期での移植を希望される症例を除き、新鮮胚移植を行った周期はhCG群で8周期、フレア群で12周期であった。それぞれの妊娠率はhCG群にて12.5%(1/8)、フレア群にて8.3%(1/12)であった。今回の検討ではhCG群とフレア群の治療成績に有意差を認められるものはなかった。
【結論】クロミフェンまたはクロミフェン+hMGを使用した卵巣刺激周期においてhCG投与と酢酸ブセレリン鼻腔内噴霧とでは、同様の治療成績が得られた。注射による疼痛や通院の便を考慮すると、酢酸ブセレリン使用が好ましいと考えられた 。