診療・治療
【発表の概要】
【目的】近年、初期培養液と後期培養液とによる Sequential培養システムを用いる方法により、比較的安定して胚盤胞へ発生させることが可能となり1)、blastocyst transfer(BT)が普及してきている。BTは胚と子宮内膜の同期性の観点からは初期胚移植よりすぐれている胚移植法と考えられ、また長期培養により移植胚の選択が容易となる長所があげられている。しかし、培養継続による胚発生停止や変性などによる移植キャンセルをおそれ、多くの施設においてBTの適応は獲得胚数が比較的多いgood prognosisの症例となる場合が多い。獲得胚数が少ない症例の中にもin vivoよりin vitro方が発生環境として適している胚を有する例も存在することが考えられるが、移植のキャンセルをおそれBTを選択することは少ない。一方、二段階胚移植法は受精後2日目 (day2) に初期胚を移植し、引き続き5日目 (day5) に胚盤胞を1個移植する胚移植法であるため、継続培養が不成功でblastocystが得られない場合においても移植そのものがキャンセルになることは回避できるという利点がある2)。そこで、今回、day2に胚が2個しか得られなかった周期に対し二段階胚移植を施行し初期胚移植と比較して有用かどうかを retrospectiveに検討した3)。
【方法】day2 に少なくとも1個は形態良好であった周期を対象とした。良好胚は day2において Veeck分類でgradeⅠまたはgradeⅡの4細胞期胚、およびgradeⅠまたはgradeⅡまたはgradeⅢの5~8細胞期胚とした。二段階胚移植は90周期に施行し(二段階群)、初期胚移植は90周期に施行した(初期胚群)。二段階群ではday2に初期胚を1個移植しday5に胚盤胞を1個移植した。Day5に桑実胚までに胚発生がみとめられない場合は移植をキャンセルした。初期胚群ではday2に初期胚を2個移植した。
【結果】二段階群における二段階目の移植がキャンセルとなった周期は39周期にありキャンセル率は43.3%(39/90)であった。二段階群の臨床妊娠率はキャンセル周期を含めても33.3%(30/90)で、初期胚群は18.9%(17/90)であり二段階群において有意に高率であった。
【結語】 胚が2個しか得られない周期に対して、二段階胚移植は初期胚移植と比較して高い妊娠率を得ることができる有用な移植法であることが示唆された。