診療・治療
【発表の概要】
われわれはこれまでに、マウスを用いて、胚が積極的に子宮内膜に働きかけて子宮内膜の胚受容能を高めることを in vivo および in vitroで明らかにしてきた。これは着床前の、胚による、胚受容に向けた子宮内膜分化であり、これを embryo-primingとして新しい概念を構築した。これの臨床応用として、2step embryo transfer(2段階法)を考案し、従来法との比較により若干の知見が得られたのでここに報告する。2段階法は体外受精胚移植法において採卵後2日目にembryo-primingのための胚を2個移植し、5日目に胚盤胞を1個移植するものである。
【方法】IVF- ET施行症例のうち受精後2日目に4細胞期以上の胚を4個以上有するものを2段階法適応症例とした。1999年6月~2000年6月においてインフォームドコンセントが得られた9症例(10周期)に対して2段階法を行い、2段階法施行以前の1998年4月~1999年5月において2段階法適応基準を満たした8症例10周期と比較した。両法における卵巣刺激法、胚移植の手技、黄体補充療法は同じ方法を用いた。胚移植は、従来法では受精後2日目に3個の胚を子宮腔内に移植したが、2段階法では受精後2日目に2個の胚を子宮腔内に移植し、その他の胚はさらに培養を続け発育させ5日目に1個の胚(胚盤胞期胚)の移植を行った。胚培養には受精後2日目まではPIメディウムを用い、3日目以降はブラストシストメディウムを用いた。
【結果】臨床妊娠率は2段階法、従来法でそれぞれ70%(7/10)、40%(4/10)であり、また着床率はそれぞれ30.0%、13.3%であり、有意差はみとめなかったが、2段階法において高い成績を得ることができた。
【結論】2段階法は高い妊娠率を得ることができる有効な胚移植法であることが示唆された。今後症例数を増やしてさらに検討を行う予定である。