診療・治療
【発表の概要】
【目的】
近年、生殖補助医療(ART)により妊娠に至った症例の予後調査において、凍結融解胚移植(frozen-ET)にて妊娠・出産に至った児は、新鮮胚移植(fresh-ET)にて妊娠に至った児と比較し、出生時の平均体重が重いという報告がある(Hum.Reprod 2010)。そこで、今回我々は、当院のARTにより妊娠に至った症例にも同様の傾向があるか調べるため、比較検討を行ったので報告する。
【方法】
2005年1月から2009年12月に当院でART施行後妊娠し、単胎児出産の転帰のあった2440例を対象とし、検討項目を追加して調査を行った。調査項目はご夫婦の移植当時の年齢・身長・体重、及び在胎日数、児の出生時の身長・体重とした。
現在1202症例に返答が得られたが、そのうち77症例はデータが不完全であったため、残りの1125症例で検討を行った。
【結果】
児の出生時の平均体重は、fresh-ET で2949.4g、frozen-ET で3062.3gとfrozen-ETにおいて有意に重く、平均身長はfresh-ET で48.2cm、frozen-ET で48.8cmとfrozen-ETにおいて有意に高かった(p<0.001)。
その他の項目に差は認めなかった。
【考察】
出生児の体重に影響を与える要因として、母体の年齢や身長・体重及び在胎日数などが考えられるが、今回の調査ではこれらの項目に差を認めなかった。frozen-ETで産まれた児の平均体重は、日本人全体の児の平均体重(3020.0g)
と比較すると重い傾向にあった。これは凍結融解胚移植の安全性を示唆すると受け取ることができるが、その一方で、胚に凍結・融解という操作を加えたことで、何らかの影響を与えた可能性というのも否定できない。今後のARTの安全性を考えていく上で、慎重にフォローアップをしていくことが重要と考えられる。