診療・治療
【発表の概要】
【目的】精巣捻転は、精巣に虚血状態をもたらすだけではなく、解除後にも精子形成障害を起こすことが知られている。精巣内において血管因子は虚血再灌流の過程の中でさまざまな調節を受けていることが予想される。今回、精巣虚血再灌流後の血管因子調節機構の解明のため、ラット精巣捻転モデルにおける経時的変化について検討を行った。
【方法】8週齢 SDラットに精巣捻転モデルを作成、1時間後に捻転解除を行い、その後(0-120時間)に精巣摘除し、タンパク質、mRNAを抽出した。Western blot法にてVEGF, nitric oxide synthase (iNOS, eNOS)について、RT-PCR法にてVEGF, VEGF-receptors (VEGF-R) mRNAについて経時的変化を測定し、更にVEGFの免疫染色もおこなった。
【結果】VEGF, VEGF-R1mRNAは虚血再灌流後3時間以内に有意な増加を認めた。iNOS、eNOS発現は虚血再灌流後それぞれ12時間以内、24時間以内に有意な増加を認めた。VEGFの免疫染色では、虚血再灌流後24時間で、血管内皮にVEGFの発現の増強が確認でき、72時間後には、更なる発現の増強が認められ、精上皮層に淡い発現を認めた。
【考察】近年VEGF投与により虚血後の造精機能障害を抑制したという報告から鑑みて、虚血再灌流後増加したVEGFは造精機能に防御的に働くことが示唆された。さらにVEGF-R1やiNOS, eNOSが造精機能障害を亢進させるのか、抑制するのかをさらに解明することにより新たな治療法開発につながることが期待される。