診療・治療
【発表の概要】
【目的】近年、生殖補助医療の発達により無精子症症例においても挙児可能となったが、その妊娠率とパートナー因子についての詳細な報告はまだほとんどない。閉塞性無精子症(OA) または非閉塞性無精子症(NOA)における患者パートナー因子別の精巣精子を用いた顕微授精(TESE-ICSI)の成績について検討を行った
【方法】検討期間は2000年1月から2007年7月とし、OA74例(36.6±9.2才)にconventional TESE、NOA140例(クラインフェルター症候群20例を含む)(33.9±5.3才)に対してMD-TESEを行った。TESEにより回収した組織は全例コラゲナーゼ処理を施行せずに凍結保存し、OA57例において184周期、NOA40症例において75周期のTESE-ICSIを施行した。
【成績】精巣内精子回収率(SRR)はOA98.6%(73/74)、NOA32.9%(46/140)であった。OAとNOAでのTESE-ICSI成績は、受精率が63.0%(730/1159)と57.6% (347/602)となりOAにおいて有意に高くなった。また、分割率は91.1% (671/730)と89.0% (309/347)、移植周期あたり臨床妊娠率は29.9% (53/177)と30.9% (21/68)であり両群間に有意差はなかった。妻の年齢別による比較では受精率と分割率には有意差を認めなかったが、着床率はOAとNOAでそれぞれ 30才未満が17.2%と21.7%、30~36才が25.0%と19.1%、37~39才が7.0%と10.5%、40才以上が2.2%と0%と37歳以上に有意な低下を認めた。採卵時の回収卵数別による妊娠率にはOA、NOAともに有意差は認めなかった。
【結論】精巣精子を用いた顕微授精における着床率は妻の年齢に影響を受けるが、採卵時の回収卵数とは関連しないことが示された。