診療・治療
【発表の概要】
【目的】臓器を-5℃で不凍結な状態(過冷却状態)で保存できる過冷却装置「プロケプト」は移植医療領域で有用性が報告されている。そこで精子保存におけるプロケプトの有用性について検討した。
【方法】2007 年6~8月に60例(年齢35.3±5.1)の同意を得て射出精液を用い、同一症例の原精液(Co. 74.5±40.0×106/ml, Mo. 41.2±13.3%)を、常温保存(常温群)、冷蔵庫(4℃)保存(冷蔵群)、プロケプト保存(P群)に3等分し、精液保存開始後12、24、48、 72時間後に精子運動率をMAKLER計算盤で測定し、運動率の変化を変動ポイント(各測定時間の運動率から保存前の運動率を引き算した値)として検討した。精液保存に用いる溶液には〔実験1〕精液のみ、〔実験2〕精液とTEST Yolk Buffer(TYB)(グリセロール含)の等倍混合、〔実験3〕精液とTYB(グリセロール不含) の等倍混合の3種類を使用しそれぞれの変動ポイントを経時的に測定した。
【結果】〔実験1〕12時間においては常温群で運動率低下の下げ幅(-16.7±14.1)は冷蔵群(-28.9±12.4)、P群(-35.2±14.6)に比し有意に小さかった。24時間においては常温群(-27.5±12.9)がP群(-35.4±14.7)に比し、有意に小さかった。48, 72時間において有意差は認めなかった。〔実験2〕全ての時間において有意差を認めなかった。〔実験3〕全ての時間において冷蔵群がP群に比し、有意に運動率低下が小さかった。また24, 48, 72時間において冷蔵群は常温群に比し、有意に変動ポイントが小さかった。
【結論】精子保存においてプロケプトの有用性は認められなかった。