診療・治療
【目的】
当院は、Vitrolife社のEmbryoScope®(以下ES)とPrimoVision(以下PV)の2種類のTime-lapse観察システム(以下Time-lapse)を用いている。ESは、培養庫とTime-lapseが一体化し、加湿を行わないドライ型である。PVは、培養庫とTime-lapseが独立し、BOXタイプの培養庫に設置して使用する。このようにESとPVはそれぞれ特徴を有しているが、これらの培養成績を比較検討した報告は無い。今回我々は、ESとPVの培養成績を検討したので報告する。
【方法】
2013年9月~2015年6月において、年齢40歳未満かつ採卵初回例でICSIおよびIVF施行卵数が4個以上の症例とした。ICSI例は、ES31例231個の胚、PV11例89個の胚を、IVF例は、ES42例332個の胚、PV28例、294個の胚を対象とした。検討項目は、良好分割率、胚盤胞発生率および良好胚盤胞発生率とした。
【成績】
ICSIおよびIVFでESとPVの平均年齢に差は認めなかった。ICSIでは、ESとPVの良好分割率(%)は49.1(81/165)、35.8(24/67)であり、胚盤胞発生率(%)は41.4(53/128)、27.3(15/55)で、良好胚盤胞発生率(%)は28.3(15/53)、33.3(5/15)であった。全ての項目に有意な差は認めなかった。
IVFは、ESとPVで良好分割率(%)は61.6(143/232)、47.4(81/171)であり、胚盤胞発生率(%)は67.6(121/179)、58.6(78/133)で、良好胚盤胞発生率(%)は43.8(53/121)、44.9(35/78)であった。良好分割率においてESの方が有意に高かった(P=0.004)。
【考察】
IVF例で良好分割率がESにおいてPVと比較し有意に高率となったが、ICSI例を含め、胚盤胞発生率や良好胚盤胞発生率には、有意な差を認めなかったことから、ESとPVにおいて現時点では培養成績には大きな差がないことが確かめられた。今後更に症例を増やし培養成績の検討を続けていきたい。