診療・治療
【目的】子宮内膜への移植前の局所刺激は、妊娠率上昇につながるという報告があるが、多くは新鮮胚移植症例である。そこで、今回我々は、ホルモン補充周期における凍結融解胚移植症例において、子宮内膜局所刺激の有効性について検討したので報告する。
【方法】2013年2月~7月でホルモン補充での凍結融解胚盤胞移植を施行した40歳未満の433名を対象とした。患者識別番号によりランダムに子宮内膜刺激を施行した115例(内膜刺激群)と施行していない318例(対照群)に分け、その後の移植における臨床妊娠率について検討した。子宮内膜刺激は、移植周期前周期の黄体期に子宮内膜細胞診キット(エンドサイト)を用いて検討期間中1回のみ施行とした。
【結果】平均年齢は内膜刺激群で34.7歳、対照群で34.9歳、平均移植回数はともに2.0回であった。内膜刺激群と対照群で臨床妊娠率40.9%(47/115) vs 47.2%(150/318)(NS) であった。移植回数3回目以上の症例で比較すると、臨床妊娠率は内膜刺激群46.4%(13/28) vs対照群28.2%(20/71)(p=0.08)であった。移植回数3回目以上でかつ移植胚がGardner分類G3以上の胚を移植した症例で比較すると、内膜刺激群61.1%(11/18) vs対照群29.7%(11/37)(p=0.026)であった。
【考察】内膜刺激群と対照群で比較し、全体では有意差はみられなかったものの、移植反復不成功で、かつ良好胚を移植できた症例においては、内膜刺激群で有意に臨床妊娠率の上昇が認められた。反復不成功症例の中には、子宮内膜局所刺激が着床に有効である症例もある可能性が示唆された。メカニズムとしては内膜刺激に伴う炎症反応がその後の周期での着床に有効とする報告があるものの未だ不明な点も多い。また、最適刺激時期や刺激方法等も報告は様々であり、今後再検討していきたい。