診療・治療
【目的】不育症患者において、抗リン脂質抗体症候群の診断基準の検査項目はすべて陰性であっても、他の抗リン脂質抗体が陽性、あるいは連続流産回数が2回の反復流産症例の場合には、確立した管理指針がなく、治療方法の選択に苦慮する。そこで、反復流産症例において、抗フォスファチジルエタノールアミン抗体(抗PE抗体)、抗フォスファチジルセリン抗体(抗PS抗体)のみ単独で陽性となり抗凝固療法を施行した症例のうち、妊娠後転帰の判明した症例について治療成績を検討した。
【対象と方法】反復流産にて抗リン脂質抗体検査(抗CL抗体,抗CLβ2GPI抗体,LAC,抗PE抗体,抗PS抗体)を施行した症例のうち、抗PE 抗体IgM , IgG, 抗PS 抗体IgM , IgGのいずれか1項目のみ陽性となり、インフォームドコンセントのもと抗凝固療法を施行し妊娠後経過の判明している症例56例を、治療内容により低用量アスピリン・ヘパリン療法群20例と低用量アスピリン単独療法群36例に分け、妊娠後転帰について後方視的に検討した。原則として低用量アスピリンはアスピリン100mg/日を妊娠前黄体期より内服開始し、へパリンは妊娠判定時よりカプロシン2500単位を1日2回皮下注射とした。
【結果】低用量アスピリン・ヘパリン療法群20例のうち、生児獲得14例、初期流産(妊娠10週未満)6例(化学流産2例を含む)であり、生児獲得率は70.0%であった。低用量アスピリン単独療法群36例のうち、生児獲得17例、初期流産19例(化学流産10例を含む)であり、生児獲得率は47.2%であった。
【結語】抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たさない症例でも、他の抗リン脂質抗体が陽性となる場合には、低用量アスピリン・ヘパリン療法が望ましいと考えられた。