診療・治療
【目的】
近年、高齢などにより妊娠困難な患者が増加し、卵子提供や胚提供などが話題になり検討されてきた。第三者からの提供による体外受精についての厚生科学審議会の生殖医療部会による平成15年の報告書では一定の条件を満たす場合は容認するとの結論が得られ、日本でも卵子提供が実施される可能性がでてきた。提供医療については多くの倫理、福祉、社会的な問題が含まれていると同時に、すでに精子提供で生まれてきた子どもたち(現在は大人)の経験から、子どもたちの出自を知る権利を認める方向で議論が進んでいる。そこで現在治療中の患者の卵子提供(エッグシェアリング)についての意識調査を行った。
【対象・方法】
JISART認定施設に独自に作成した質問紙を用いた調査を依頼し、7施設の協力を得た。各施設で体外受精をしている女性患者1054名に質問紙を配布し652名から有効回答を得た。有効回答率61.9%、平均年齢は37.8歳であった。
【結果】
「現在卵子の提供医療を必要と感じている」患者は5.6%であった。また、「日本で認められたら良い」と答えた患者は66.9%であったが、「必要になれば受けたい」と答えた患者は33.8%であった。認められたら良い理由は「困っている人がいる」が53.2%、「望む治療を選択する自由があるから」が39.8%であった。37.0%が「子どもへの告知をする」と答えているが、「小さいうちから」告げると答えたのは全体の7.5%であった。
【考察】
体外受精を受けている患者の中では提供医療に対し肯定的な意識を持っている者も多いが、現時点では感情的な面での意見に留まっている傾向が強く、倫理・社会的な問題や生まれてくる子どもの立場に立って考えている患者は少数であることが分かった。このことから提供医療に対する問題は、実施に踏み切る前に倫理・社会・福祉など多方面からの十分な議論と啓蒙が必要であると考えられる。