診療・治療
【緒言】
Kartagener症候群は、Immotile cilia 症候群の一つで、繊毛、鞭毛の運動不全により男性不妊を起こす。今回当院にてKartagener 症候群と診断した男性不妊患者の射出精子によるICSIにて生児を得た症例を報告する。
【症例】
初診時(2005年4月)男性患者33歳、妻33歳。不妊歴1年。問診にて慢性副鼻腔炎、慢性気管支炎、嗅覚異常、内臓逆位を認め、複数回の精液検査にてごく少数の運動精子(4~28精子/全視野)しか認めず、Kartagener症候群と診断した。ICSIの適応をインフォームドコンセント後、2005年8月、Long 法にて21個採卵。採卵当日の精液検査では運動率0.3%、直進運動精子は認めなかった。18個のMII卵に対し運動精子を用いてICSIを施行し、13個で受精を確認、初期胚にて全胚凍結した。ホルモン補充周期(HRT)にて2段階凍結融解胚移植を施行し、妊娠成立、DD twinとなった。1児は初期で稽留流産、他児は妊娠37週、出生時体重2675gにて健児で出産となった。2008年4月、第2子希望にて受診し、計4回の単一凍結融解胚移植を施行。うち3回で妊娠反応を認めるもすべて化学流産となった。夫婦染色体検査を除く不育症検査を施行したが、異常は認めなかった。再度Long 法にて6個採卵。採卵当日の精液検査は運動率0.1%であり、5個のMII卵に対しintracytoplasmic morphologically selected sperm injection(IMSI)を施行。5個すべてで受精を認め、初期胚にて1個凍結後、4個継続培養したが、胚盤胞には至らなかった。
【結語】
Kartagener 症候群患者は、運動精子の確認ができれば、ICSIの適応となりうる。また、第1子出産後、化学流産を繰り返しており、本症候群との関連性については、今後の検討課題である。