診療・治療
【発表の概要】
【目的】卵管鏡下卵管形成術(FT)は、卵管因子の不妊治療に用いられ確立された治療法となってきている。当院でのFT後妊娠症例について、排卵妊娠側卵管における卵管鏡所見およびFT前後の卵管通過性について検討した。
【対象と方法】2006 年1月から12月までの205症例のうちFT後妊娠した49例である。それらのうち、子宮卵管造影検査を術前術後におこない、妊娠時の排卵側卵管を確認できた43例を対象とした。FTは卵管鏡バルーンカテーテルシステム(テルモ社製)を用い6cmカテーテルを使用した。「結果」平均年齢は31.9歳で、平均不妊期間2年4カ月であり、不妊原因は卵管因子および軽度の男性因子が殆どであった。FT後妊娠率は23.9%(49/205)であり、妊娠は術後平均 4.3カ月(手術周期を0カ月として最長は16カ月)であった。タイミング法で53.3%(23/43)が、AIHで30%(13/43)が妊娠した。妊娠例ではAIH5回以内であった。排卵側卵管の通過性は、術前閉塞24例(内腔癒着9例、卵管内ヒダ不良例6例)で術前卵管狭窄19例(内腔癒着1例、卵管内ヒダ不良8例)であった。FT不完遂卵管側での妊娠例は2例あった。また術後のHSG所見で閉塞と判断した側での排卵妊娠例が3例あったが、それらは術後1カ月目のHSGでの評価であった。術後6カ月以上経過しても妊娠に至ってない例では複数の不妊原因(卵巣および子宮内膜症など)が存在した。
【結論】妊娠例のうち卵管内ヒダの正常例が67.5%(29/43)であったが、卵管ヒダ所見が全体に不良例でもFT後妊娠例が存在した。FT後の通過性診断として術後1カ月でのHSG所見では閉塞と診断しても妊娠例が存在したので、卵管通過性診断およびステップアップには十分慎重であることが必要である。複数の不妊原因因子が存在する場合には、卵管鏡所見と考えあわせART治療を考えることが必要であることが示唆された。