診療・治療
【発表の概要】
【目的】ホルモン調節周期を利用した凍結融解胚移植において用いるエストロゲン製剤の種類が妊娠および流産率に影響をあたえるか否かを検討した。「対象および方法」平成17年10月から平成18年2月までにホルモン調節周期を利用し二段階胚移植法を実施した113例を検討対象とした。エストロゲン製剤として結合型エストロゲン(プレマリン内服錠)を3.75mg/dayを投与したのは32例(PREM群)、エストロゲン製剤の貼付薬(エストラダームM)を投与したのは81例(EST群)であった。黄体ホルモン補充として、Day15よりプロゲステロン膣座薬400mg/day、Day16より酢酸クロルマジノン 12mg/dayを投与した。Day15、Day23、およびDay30の血中E2値、P4値、子宮内膜厚を両群で比較検討した。
【結果】Day15 のE2値はEST群において高い傾向がみられ、Day23とDay30のE2値には両群で差はなかった。EST群の妊娠率は周期あたり65.1% (56/86)、流産率は33.9%(19/56)であった。PREM群の妊娠率は周期あたり59.4%(19/32)、流産率は21.1%(4/19)であった。流産率はPREM群で低い傾向がみられたが有意差はなかった。PREM群では妊娠成立の有無に関わらずDay15におけるE2値に差はなかったが、EST群でのDay15のE2値は非妊娠群で412±206mg/dl、妊娠群で564±274mg/dlと妊娠群でDay15のE2は高値を示した (p<0.01)。子宮内膜厚は両群に差はなかった。結合型エストロゲン使用周期では妊娠しなかった症例でその後エストロゲン製剤の貼付薬使用した8例中 5例が妊娠にいたった。一方エストロゲン製剤の貼付薬使用周期では妊娠しなかった症例でその後結合型エストロゲンを使用した5例中2例が妊娠にいたった。
【結論】ホルモン調節周期を利用した凍結融解胚移植において、用いるエストロゲン製剤の種類は妊娠率および流産率に影響をあたえなかった。エストロゲン製剤の貼付薬を使用した場合、Day15のE2が充分に高くなることが重要であることが示唆された。また、妊娠に至らなかった症例では、使用するエストロゲン製剤の種類を変更してみるのも一つの方法であると考えられた。