診療・治療
【発表の概要】
【目的】無精子症例であっても精巣より精子回収が可能であることが多く、精巣生検組織を凍結保存し、ICSIを実施することで挙児が可能となっている。今回、過去4年間に当院で施行したTESE症例について、精巣内精子の有無、TESE・ICSIによる受精率、妊娠率等について検討した。
【方法】対象は夫が無精子症と診断された92組である。夫の平均年齢は36.7歳(26-70歳)、妻平均年齢は32.3歳(25-43歳)であった。閉塞性無精子症は27例、非閉塞性無精子症は65例であった。TESEによって得られた精巣組織は、凍結保存し将来の治療に備えた。子宮内に胎嚢を確認出来た症例を妊娠例とした。
【成績】精巣組織内に精子を確認できたのは、51例(55.4%)であった。閉塞性無精子症の27例では、全例(100%)に精巣内精子を確認でき、非閉塞性無精子症では65例中24例(32.8%)に精子を確認できた。精子を確認できた51例にはその後TESE-ICSIを実施し、30例(57.7%)に妊娠成立を得た。TESE-ICSIでの受精率は57.4%(507/883)、2~4細胞期への発生率は51.4%(454/883)であった。胚移植あたりの妊娠率は27.3%(27/99)、流産率は22.2%(6/27)であった。また、TESE-ICSI後に凍結保存した胚を融解移植した18例における、胚移植あたり妊娠率は27.8%(5/18)であり、流産率は0%(0/6)であった。
【結論】無精子症の患者において実施したTESEにより55.4%と高い確率で精巣内に精子を確認できた。TESE-ICSIにおける妊娠率は症例あたり、57.7%であり、TESE-ICSIは無精子症患者の治療として非常に有効であることが示された。